「レオン? レオン!! しっかりなさい!! まあ、初めてがあんなのじゃ……ショックが大きかったのは分かるけど……」
俺はセリーナに呼ばれて、先刻の回想に飛ばしていた意識を現実に戻す。
どうやら、俺が呆然としていたように見えたようだ。
「あ、ああ、すまない」
再び天界裁判所地下の留置所、俺の目の前に意識を失ったサキは横たえられている。
サキは拘束されているが、その顔は綺麗に拭かれていた。また血塗れだった服も、白の開襟シャツ・白のスラックスという服装に替えられていた。
そんなサキを見下ろすようにセリーナが口を開く。
「では、始めます。今から我々を含めた言動の全てが彼女の裁判の証拠とされますので、不用意な言動は避けるように。さあ、ディアナ……お願いしますね」
セリーナが調査官のディアナを促す。ディアナは黙ってサキの傍らに進み、彼女の額
に手を当て魔力を集中させる。
ディアナの全身が柔らかい光に包まれ、サキの体へ……額から頭部全体、そして次第に体全体へと柔らかい光に包まれて行く。それを見ていた俺は心の中でつぶやく。
(これがサイコメトリーってやつか……実際に見るのは初めてだが……)
その状況から、何も何も外見上の変化が見られないまま時間だけが経過していく。
しばらく経った頃、唐突にそれは起こった。
「……あ」
突然魔力の光が消え、ディアナは倒れ込む。それを警備官の一人が手慣れた様子で抱き止めた。
「大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込むセリーナと俺に対し、弱々しくディアナは微笑み返す。
「……私は大丈夫です。それより、早く……サキの記憶を……」
「そうね。お願いするわ」
ほっとしたようにセリーナが答えると、書記官は速記の為にペンを握る。
そして椅子に腰を下ろしたディアナは瞳を閉じ、今『覗た』サキの記憶……出会いと別離、転生と再開、破滅と堕天……を語り始めた。