数日後、レオンは「将軍」に関する報告書作成の為、ラグリア国を再度訪れていた。
報道によると「将軍」はA国特殊部隊に逮捕された際、拳銃自殺した……とされている。
だが、直前まで側にいて、事前に情報を入手していたレオンは真相を察していた。
また国民も「将軍」の圧政から解放してくれたA国に遠慮し口をつぐんでいるが、A国の謀殺であると、薄々は感付いていた。
一方A国の軍隊は、テレーズとハリーを探索すると称して居座り続けている。その事によるトラブルも少々発生しているようである。
そのような事をまとめ、とある地方都市の市を歩いていたレオンに声を掛けてくる人物がいた。
???「ん? ちょっとそこの兄さん! そう! アンタだよ!!」
レオン「俺の事か? ご婦人?」
恰幅の良い、人の良さそうな、それでいてしっかりしてそうな中年の女性がレオンを呼び止めた。
女性「あらやだ『ご婦人』だなんて。あ、それはそうとアンタの親か親類に『カルロス』って人いない?
『カルロス・J・コバヤシ』って人・・・」
レオン「いや、聞いた事もないが・・・」
平然と答えるレオンであったが、内心ではかなり動揺していた。なにしろ、この女性が言った男はレオンの人間体のモデルとなった、反政府ゲリラの小隊長の名前だったのである。
女性「そうかい……いやね、アンタが彼と本当に生き写しでね……もしやと思ったんだけど……
まあ、世の中にはそっくりさんが3人はいる、とか言うしね……
あ、カルロスって人は昔、あたしの家の近くに住んでいた人でね……
沢山の伝書鳩を飼っていたのよね。
でも、『政治を良くするんだ!』なんて言って、鳩達とこの町を出て行ったっきり……
今では、どこで何をしているのやら……」
女性は、はたと気付く。
女性「ああ、すまないね。こんなオバチャンの昔話に付き合わせてしまって」
レオン「いや、カルロスさん……ご無事だと良いのだが……」
女性「ありがと、兄さん! まあ、こんなご時世だけどアンタも頑張りな!」
そう言って女性と別れたレオンであったが、心の中の動揺を顔に出さないようにするのに一苦労であった。
レオン(こんな所で昔の自分の影とご対面とはな……)
歩きながら、珍しくも感慨に耽るレオン。
レオン(奴が……俺のご主人様に会う前は……ここで暮していたとはな……)
しばらく歩きながら考え込んでいたレオンであったが、ある決意を固めた。
レオン(行ってみるか、あの場所へ……ご主人様が……眠る……)
第六話「偽装者」(ライアー)に続く……