列車は機関車2両で牽引され、客車12両、貨車20両(内、小型の貨車8両)が連結されていた。
貨車を調べていくうちに、扉の無い有蓋車を見付けた。
見ると、あつらえたように空荷であった。
まず、レオンが屋根の縁に掴まってから着地する。続いてサキも、今度は無事に着地する。
客車内のようにはいかないが、それでも風を防げるだけ、ありがたかった。
レオンは地図とペンライトを取り出した。そしてペンライトで地図を照らす。
レオン「今、ここをこう移動している」
鉄道を表す線を指し示す。そしてその指はある一点で止まる。国境の町、その少し手前であった。
国境の町の手前で、最も国境に接近する一点で……。
レオン「ここへの到着は、約2時間後になる。
すまんが、ここからは徒歩で……山道を歩いて国境を越える事になる……」
そんなレオンに、サキはこの任務の当初から疑問に思っていた事があった。
あまりにも詳しすぎる……資料を読んだだけでは、ここまで臨機応変に行動する事はできない。
思い切って、その事を訊ねる。
サキ「……レオン……あなたは……何故……ここの地理に……詳しいの……?」
レオン「ああ、言うのが遅くなったが……俺はこの国の出身なんだ」
サキ「!!」
レオンはあっさりと、事も無げに答える。だがサキにとっては衝撃的な事であった。
レオンの事を何も知らなかった、という意味において……。
レオン「セリーナが俺達にこの任務を振ったのも、所以無い事じゃないんだぜ」
サキ(私は……何も知らない……レオンの事を……いいえ……知ろうともしなかった……)
レオンがサキを気遣っていろいろと話しかけるが、その言葉は全く彼女の耳に入ってなかった。
サキ(私は……レオンの……何を……知っているというの……?)
サキはそのような事を思いながら、次第に眠りに落ちて行った……。