死の先に在るモノ

第4話「護衛者」(ガーディアン)

サキ「解封!!」

同時に封冠が砕け散り、守護天使の物とは大きく違う羽が、サキの背中に生まれる。
それと共に、方陣の中の13人にかかる重圧が、ふっと弱くなったような気がした。
凄まじい、三重の重圧から解放され、ようやく周囲を見渡せる余裕が生まれた。
特に・・・重圧から解放してくれた、サキの羽に大きな感嘆の声が発せられる。
 
・・・とても大きく・・・
らん「あれが・・・大天使の羽・・・」
なな「おっきい・・・」
・・・美しく・・・
もも「きれいです・・・」
るる「きれいだぉ・・・」
つばさ「なんて・・・美しい・・・」
・・・深紅の・・・
みどり「赤いれす・・・」
くるみ「真っ赤なの・・・」
あゆみ「紅・・・そんな・・・あの人は・・・」
・・・それでいて切ない・・・
あかね「でも、悲しそう・・・」
みか「胸が・・・ぎゅっと締め付けられるような・・・」
・・・危険な・・・
ゆき「危険な香り・・・解っていても・・・魅せられてしまいそうです・・・」
青年「なにか・・・吸い寄せられそうだ・・・」

深紅の羽が全て展開し、サキの真の力が完全に解放されたその瞬間、ロードは右側から気配を感じ、咄嗟に楯でガードする。
と、楯に強烈な衝撃が加わり、ロードは楯ごと吹き飛ばされ、背中から地面に叩き付けられる。

ロード『ぐぉ・・・速い!!これが・・・』

斬撃が防がれたと見るや否や、サキは間合いを一挙に詰めロードに対して剣を振り下ろす。
ロードは立ち上がりかけた不自然な体勢のままランスの腹で受け、ぎりぎりと鍔迫り合いがされる。
ロードが力任せにランスを薙ぐ。が、サキは楽々と紙一重でかわし、横殴りに剣を振るう。
回避が間に合わず、再び楯でガードする。
が、楯に異様な手応えを感じ、見ると一本の鋭い亀裂が走っていた。

ロード『な、なんだと?!この楯は物理的に破壊は困難・・・』

サキが剣を振るう。
再び楯でサキの剣を阻んだのだが、次の瞬間、楯は粉微塵に砕ける。
この時ようやく、ロードは楯を破壊した≪モノ≫の正体を察した。

ロード『時空断絶だとぉ!?バ、バカなぁ!!』

時空断絶とは、空間をずらす事により時空の断層を局所的に創り出し、対象を切断又は破壊する技である。
この技の前に切断・破壊出来ない物質は無い。
それこそ肉体を自在に液体化・気体化させたり、時空に対する攻撃を無効化できる程の能力を持っていない限りは・・・
ロードはある程度時空を操る能力がある。
その為サキの≪時空断絶≫を受けても一撃で倒される事は無い。
が、無効化出来る程の能力も備えてはいなかった。

ロード『お、おのれぇぇ!』

半ば破れかぶれになって、ロードは激しい突きを繰り出す。
常人には見ることも出来ない速さ、しかしそのことごとくをかわすとロードの内懐に入り込み、無造作に手首を掴む。
ロードが必死に引き剥がそうとするが、サキは微動だにしない。
ロードが背後に気配を感じて振り向くと、鉄パイプを持ったレオンが、微笑みを浮かべながら立っていた。
傀儡は、もう一体も動いていない。
 
レオン「これで王手詰み(チェックメイト)だな・・・」
真の力を発揮していない状態でも、サキが思っていたより強く、多くの傀儡を同時に複雑な動きをさせる事ができなかった上に、傀儡への魔力の供給がサキの羽の力(サキが真の力を解放した副作用のような物)によって完全に遮断された。
またロードの余裕も完全に無くなり、傀儡への魔力の供給が停止した。
そのため、只でさえ機敏とは言えない動きが、さらに鈍くなっていた。
そんな傀儡はいくら数を揃えても敵ではない。
しつじの世界有数の素早さと持久力を併せ持つレオンの前では、木偶人形にも等しかった。
ロードがサキとの戦いにかかり切りになってから1分と持たずに全滅してしまった。
もっともそれ以前の段階でもレオンの敵とは成り得ず、大きく数を減らしていたのであるが・・・
 
ロード『バ、バカな・・・これ程の者が・・・あの女め・・・
    ?!・・・そうか・・・そういう事か・・・!!』

<あの女>という言葉に何か引っかかる物をレオンは感じていた。

レオン「おい、一体どう意味だ?」
ロード『くくく・・・ははは・・・疑問を抱えたまま死んで行くがいい・・・
    どちらにしろ・・・貴様らに逝き場所は無いのだからな!!』
サキ「・・・さようなら・・・」

負け惜しみとも取れるロードの言葉を無視し、サキの剣がロードの体ごと時空を無数に切り裂く。
13人は思わず目を背ける・・・が、想像に反して血飛沫は無い。

つばさ「え?ヨロイだけ?」

バラバラになったヨロイが転がっているだけであった。
そのヨロイから黒い瘴気のような物が噴き出し、拡散して消えていった。
ヨロイその物も、瘴気のような物が噴き出すと同時にボロボロに崩れ、砂粒のようになって消えていった。


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