とあるマンションの一室・・・そこに荒い息を繰り返す大男の姿があった。
大男「はあっ、はあっ、くそう!・・・あれが・・・追跡者か・・・はあっ、はあっ」
すると奥の部屋から、先ほど逃げた少女が驚いて出てきた。
少女「どうしたのだ?カイ、何があった?」
大男「リキが・・・殺られた・・・」
少女「な!」
カイというのが大男、リキというのが小男の名前のようだ。
少女は信じられない、という表情で絶句する。
少女「・・・一体どうすれば・・・」
カイ「早くここから逃げるぞ!」
少女「え?でも・・・」
カイは渋る少女を宥めようとする。
カイ「ここでなくても、人間どもに復讐することは・・・うっ!!」
ベランダから逃走しようとしていたカイと少女を阻むように、窓際にレオンが立って
いた。
カイ「何故ここが?!」
レオン「案内ご苦労さん」
皮肉っぽくニヤッと笑いながら言うレオン。
慌てて、玄関から逃げ出そうと振り向く少女。しかし目の前には・・・
サキ「・・・残念だったわね・・・」
サキが気配を感じさせずに立っていた。
少女「えっ?!ぐふっ・・・」
サキが当て身で気絶させ、そのまま抱きかかえる。
サキ「・・・彼女は返してもらうわ・・・」
ここに至ってようやく、カイは守護天使の思惑を理解した。
リキを始末した後、自分をわざと逃がして根拠地まで案内させる・・・
カイ「お、おのれぇぇぇ!」
怒りの声も、こうなっては虚しいだけであった。
カイ「こうなったら、女!お前だけでも・・・!」
先ほどリキを葬ったレオンを強敵と判断、
自分の前に手も足も出ない(と、勝手に判断していた)サキを標的に選んだ。
それはまさしく、猫と虎、犬と狼とを見誤る判断であった。
カイはサキの実力を把握出来ていなかった。また自分の力に奢る傾向があった。
サキは自分自身の能力を正確に知っていた。また先程の戦闘から、カイの実力も判断がついていた。
敵を知らず己も知らざりし者、敵を知り己を知る者・・・
刃を交える前から勝敗は決まっていた。
少女を抱きかかえたまま、片手で剣を抜く。
サキ「・・・愚かね・・・格の違いも判断出来ないとは・・・」
カイは戦斧もろとも、サキの剣によって頭から一刀両断されていた。
断末魔の声を上げる間も無く、カイは光の粒となって消えていった・・・