一人の青年がふらふらと車道に飛び出す・・・
そこへ一台のトラックが走ってくる。
運転手はとっさにブレーキを踏んだ。が、スリップしながら突っ込んでくる。
少女「危ない!ご主人様!」
一人の、14・5歳くらいの少女が青年を抱きかかえるように飛び付く。
倒れた2人の足をかすめるようにタイヤが通り過ぎる。
無事止まった大型トラックの運転台から、血相を変えた運転手が半身を乗り出して怒鳴る。
運転手「ば、ばっか野郎!!死にてえのか!!」
それだけ言い捨てると運転手は車を発進させた。
虚ろであった青年の目が突然元に戻った。
自分を抱えるように倒れている少女と走り去るトラックを当惑した表情で眺める。
青年「あ・あれ・・・?ど、どうしたんだい、つばさ?」
つばさ「どうした、じゃないよ!突然道路に飛び出して!!」
青年「え?なんで僕は倒れているんだ?」
つばさ「え?何言って・・・?って、何も覚えてないの!?」
青年「うん・・・歩道を歩いていた事までは思い出せるけれど・・・あ、なな!」
青年とつばさは慌てて起き上がると、6・7歳の少女が駈け寄って来た。
なな「ご主人さま、だめじゃない。信号のないところ、わたったら!」
その時つばさは、はっとした。ご主人様である青年の影から何か・・・≪この世ならざるモノ≫が飛び出したような・・・そんな気配を感じた。
起き上がったつばさは硬い表情でななに向き直る。
つばさ「なな、ご主人様は体の具合が悪いみたいだから、今日は帰ろうか」
なな「えー、そんなぁ〜〜」
つばさ「ご主人様の為だよ。ねっ?」
説得するつばさの只ならぬ迫力に、ななは不承不承ながら了解する。
なな「・・・うん、わかったよ・・・」
青年「ごめんな、なな。今度また一緒に散歩しような」
うなだれていたななは、申し訳なさそうな青年の声にぱっと顔を輝かせる。
なな「うん!ぜったいだよ!」