死の先に在るモノ

第3話「追跡者」(チェイサー)

街に煌煌と月光が降り注いでいる・・・満月である。
既に日付が変わり、歩道の会社帰りのサラリーマンの姿もまばらになってきている。
小規模なオフィスビルが多数ひしめく、その交差点に一台の4トントラックが走ってくる。
そのトラックが突然、蛇行運転を始めた。

運転手「な、なんだ!?ハンドルが・・・利かねえ!ど、どうなってやがるんだ!?」

運転手はとっさにブレーキを強く踏む。しかしスリップしながらトラックは立ち木に衝突する。

運転手「っくう!!・・・なんとか俺は無事のようだな・・・なんとか・・・」

額から血を流した運転手が、必死に這い出す。
這い出した直後、トラックは炎上する。

運転手「!!な、なんでだ・・・・・・なぜだ!?」

ディーゼル燃料(軽油)はガソリンほど簡単には火が付かない。
少し燃料が漏れていたとはいえ、この火の廻りは異常であった。

運転手「本当だ!運転していたら、突然ハンドルが利かなくなって・・・」
すでにレッカー車が到着し、トラックの残骸の撤去が始まり、
警官による交通整理も一段落ついた所のようだ。
事故(?)直後に大勢集まっていた野次馬も、少なくなっていた。
運転手は警察車両(ワゴン車)の中で、警官2人から事情聴取を受けていた。
本来なら「車が勝手に蛇行運転した」などという事を主張しても、一笑に付されるだけであろう。
だが、この時の警官の目は「またか」と「厄介な事になりそうだ」という感情があった。

警官「事件・事故、どちらにしても調書作らなきゃいけないんで、このままご同行願えますか?」
運転手「わかったよ。ったく!なんで俺がこんな目に・・・」

この運転手は自分程の不幸な男はそういない思っていた。

しかし違っていた。全く同じ状況に陥っている者は、もうすでに7人もいたのである。
そして、人間は知らなかった。
現場を見下ろすビルの屋上にて、怪しげな3つの影が一部始終を見ていた事を・・・。

 

 

怪しげな影は15,6の少女、中年の小男、壮年の大男の姿をしていた。
その少女が、忌々しげに舌打ちをする。

少女「ちっ、またハズレか!」
小男「焦ってはいけませんよ、焦っては良い結果がでませんよ」
少女「あ、ああ、そうだな・・・」
大男「しかし、次はどうする?まだここで・・・」
サキ「・・・次はないわ・・・」

その声に、3人は弾かれたように振り返る。


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