2月14日、光彦が家に帰ると、いつもと違う出迎えを受けた。
ひとみ「ご主人様、お帰りなさい。」
あすか「今日は…バレンタインデーですから…。」
みゆう「みんなでチョコを作ったの!」
まゆり「机の上にありますので、どうぞお召し上がりください。」
見ると、上の開いた四つの箱の中にそれぞれ違った形式のチョコが入っていた。
まず光彦は、色々な形をした小さいチョコに注目した。そのチョコは、色の濃いものと薄いものがあった。
光彦「これは?なんかかわいい感じがするけど…。」
ひとみ「これはあたしと…。」
あすか「私が…作りました…。」
光彦「色が薄いのは普通ので、濃いのはビター、でいいのかな?」
ひとみ「そうです。」
あすか「味の感じが…イメージ…あってるかな…って…。」
光彦「ありがとう。」
続いて、大きなハート型のチョコに目がいった。
光彦「この分かりやすい形のは?」
みゆう「あ、それはあたしの。ちょっと手にとって見てみて。」
その言葉を受け、光彦はチョコを手にとってみることにした。すると、あることに気付いた。
光彦「何か挟まっているようだけど…。」
みゆう「イチゴジャムをはさんでみたの。」
どうやら赤い流動体をはさみたかったようであった。
(イメージぴったり…。)
そう思った光彦は少し笑った。
さらに、何か箱のような形の小型チョコが目に入った。だが光彦にはそれがいま一つよく分からなかった。
光彦はばつが悪そうに言った。
光彦「これはまゆりのだよね?でも何を作ったのか分からないや。」
まゆり「これはミルフィーユです。」
光彦「なぜミルフィーユを?」
まゆり「ミルフィーユは、『千枚の葉』という意味だと知りまして、
それでどうしても作りたくなったのです。」
光彦「…大変だったろうねぇ。」
まゆり「…そんな。」
一通りの説明が終わった後、光彦は食べ始めた。
光彦「みんな、ありがとう。それじゃいただきます。」
光彦は、少しずつ、かみしめるように四人のチョコを食べていた。しかし、食べているうちに神妙な顔つきになっていった。
ひとみ「どうしたんですか?」
まゆり「まずかったのですか?」
光彦「いや、考えてみたら僕、バレンタインに母さんや姉さん以外からチョコもらったことって
ないんだよね。だから…なんかすごく感動しちゃったんだよ。」
まゆり&あすか&みゆう&ひとみ「ご主人様…。」
光彦「ありがとう。今まで生きてきた中で一番おいしいチョコだよ。」
こうして、バレンタインデーはほのぼのとした幕切れとなった。