饗介「ああ…虚しい!」
ハエの呪詛悪魔・饗介と洋の二人がアジトで駄弁っている時に不意に饗介が声を上げた。
洋「何だよ、急に?」
洋はもちろん不思議に思ったため、声をかけた。
饗介「だって、最近まゆりちゃんに触ったりまゆりちゃんの下着を盗んだりとかできなくてさー。」
洋「まあ、最近は彼女らも俺たちへのガードを固めてきてるからな…。まあ、それも仕方ないよな…。」
饗介「ああ、まゆりちゃんの匂いを嗅ぎたい!胸を揉みたい!パンティーを脱がせたい!いじめたいー!!」
欲望を隠そうともしない饗介。そんな饗介に対して洋は笑いながらこう言った。
洋「何なら俺がまゆりちゃんのロボットでも作るかい?」
これは冗談のつもりであった。しかし、この話題に対して饗介は思いのほか真剣に食いついてきた。
饗介「本当か?それは可能なのか、洋?」
洋「今すぐ、ってわけにはいかないけど…。まあ研究すればできるよ。」
饗介「そうか!じゃあ是非頼む!」
洋「俺はいいけど…でもロボットで欲求を満たすのはそれこそ虚しくないか?」
饗介「もうロボットでもいい!俺はまゆりちゃんが欲しいんだ!」
洋「そうか…。分かった、やってみるよ。」
饗介「ありがとう!」
かくて、洋のロボット開発事業が始まった。
さすがの洋も人型ロボット開発にはてこずっていた様子であった。
洋「おーい、まゆりちゃんのスリーサイズって何だったっけ?」
洋「プログラムが動かないなあ…。」
洋「ひどい動き…。」
しかし、さすがに洋の技術力は素晴らしく、10日ほどかけてどうにか完成させることに成功した。
洋「ついに出来たぞ!」
饗介「おお!」
洋「これが俺の自信作「好き好きまゆりちゃん6号」だ。」
饗介「6号、ってことは5体失敗したということだな。」
洋「まあな。でも意外に早く仕上がったと思うぞ。」
饗介「確かに。で、どんな感じなんだこれ?」
饗介の質問に対して洋は自信満々な様子で答え始めた。
洋「まず素体は特殊なシリコンと樹脂を組み合わせて作ったから人体に近くかつ人体よりも触り心地に優れている。」
饗介が触ってみると、確かに気持ちよい。
饗介「おお、確かにこれはいいな。」
洋「胸や尻には特にこだわっているからお触りの楽しみもある。」
饗介「素晴らしい!」
洋の説明はまだ続く。
洋「骨格は軽量金属を使っていて丈夫だし、小さいモーターを多数配置する方法で高い小回りと運動性を実現している。身体能力は本人より高いだろう。」
饗介「なるほど…。」
洋「髪の毛は最新式の高級人絹を採用していて輝きも手触りも抜群。目に仕込んだカメラアイは暗くても明るくても大丈夫だし、見た目もいいから輝く瞳も再現してあるのだ。」
饗介「へえ…。」
洋「人工知能は饗介に従うようにプログラムしてあるし、学習機能もあるから育てる楽しみもある。料理などの家事も覚えているぞ。」
饗介「すごいな。悪いところないじゃないか。」
饗介が賛辞の言葉を送ると、洋は急に曇った表情になった。
洋「それがな…。このロボット一つ欠点があるんだ。ロボちゃん、挨拶してみなさい。」
洋が「好き好きまゆりちゃん6号」(以下「ロボちゃん」)に挨拶を促すと、ロボちゃんは饗介に礼をしながら挨拶の言葉を述べた。
ロボちゃん「コンニチハ。」
ロボちゃんの声は確かにまゆりに似てはいた。しかし、その声は明らかに合成と分かるかなり無機質なものであったのである。
洋「このロボットの声は合成音で作ったから不自然さがぬぐえないんだ。」
饗介「えー…。これが限界だったのか?」
洋「まあ本人から声のサンプルを取ればもっと自然な声を採用出来たんだけど…でも本人に「饗介を慰めるためのロボットを作るから協力してくれ。」と言って協力してくれると思うか?」
饗介「多分…怒ると思う…。」
洋「だろ?まあともかくこれ実用には耐えると思うからしばらく使ってみてくれ。」
饗介「ありがとう!」
洋「あと、たまに一緒に話とかアンケートとかさせてな。データ取りとかしたいから。」
饗介「分かった。」
かくして、饗介と洋とロボちゃんの共同生活が始まった。
饗介はロボちゃんにある時はミニ浴衣を着せて…
ロボちゃん「饗介サンノコトガ大好キ。」
またある時はメイド服を身に付けさせて…
ロボちゃん「ズット一緒ニイヨウネ。」
またまたある時はゴスロリの服をまとわせ…
ロボちゃん「好キナコト何デモシテイイヨ。」
さらにある時は黒レザーのボディコン服を与えて…
ロボちゃん「光彦トハ遊ビナノ。」
饗介とロボちゃんの間も上手くいっているように洋には見え、洋もその順調な成長振りと関係のよさにほっとしていた。しかし…
饗介「洋ィ~。」
何度目かのデータ取りの時、饗介は泣き顔であった。いつもはそばにいるはずのロボちゃんもいない。
洋「あれ?ロボちゃんは?」
饗介「逃げられた~。」
洋「え、逃げた?基本的に饗介のいうことなら聞くはずなんだがな。」
饗介「だろ~?」
洋はしばし考えた。そこで、とある心当たりを思い浮かべるのであった。
洋「饗介、最近ロボちゃんに何をした?」
饗介「うーん…たしか××(裸の方がむしろ恥ずかしくないような衣服)を着せたり、○○(ここではとても書けないエロくてえげつない行為)をしたり…。」
洋「あー…。それだけのことをしては…。」
饗介「どういうことよ?」
洋「実はロボちゃんの人工知能が持っている学習機能の中には暴走を避けるためにある程度善悪の判断が出来るようなプログラムを仕込んであるんだ。もちろん饗介の言うことは原則聞くようにはしているけど…饗介の趣味が善悪判断における許容範囲を超えてしまったんだろうな。」
饗介「そんな!」
洋「まあ…というわけで、だな。ロボットには発信機仕込んであるから探し出せる。でもこれからはミニスカメイド服と乳触り位にしておけ。」
洋は饗介をなだめるように言った。しかし饗介は収まらない。
饗介「やだいやだい!まゆりちゃんは俺のなんだい!いじっていじめたいんだい!」
駄々っ子のように床で暴れる饗介。
饗介と洋のつながりは深い。2人の関係はまさに「心友」と書いて「しんゆう」と読むほどかけがえのないものである。しかしこの時ばかりはさすがの洋も
(こいつと縁切ろうかな…。)
と考えたという。
なお、ロボちゃんは発信機の力により案外あっさり見つかったものの、その後は家事用のロボットとしての機能しか果たさない真面目なメイドロボットになったという。
ロボちゃん「オ触リハイケマセンヨ。」
おわり
「有能すぎるのも考え物」という方向に持っていった感じになりました。しかしロボットのまゆりにも拒否される饗介…。