すると、ひとみは泣き顔になってその場にワンピースをはらりと落とした。それによってひとみは一糸まとわぬ姿となった。
光彦「お、おい、ひとみ!いくら何でも…。」
光彦の言葉が終わらないうちに、ひとみは光彦に抱きついた。そして思いつめた様子で話し始めた。
ひとみ「ご主人様、お願いです。あたしを食べて下さい。」
光彦「ええっ?」
動揺が隠せない光彦。しかしひとみは構わずに続ける。
ひとみ「今年、あたしはバレンタインチョコを作り損ねてしまいました。そのまま何も渡さないわけにはいきません。」
光彦「ちょ、ちょっと…。」
ひとみ「もう…こうなったら…あたし自身を…食べていただかなく…ては…ご主人様に…申し訳が…
申し訳が…うっ…うっうっ…。」
ついにひとみは泣き出してしまった。
(これは…大変なことだぞ…。)
このままでは見ていていたたまれない。光彦はひとみを励ますことにした。
光彦「ひとみ…。僕はそういうことは別に望んでいないよ。」
ひとみ「え…?」
光彦「確かに君はバレンタインチョコを作れなかったかもしれない。でも僕はそんなことはどうでも
いいんだ。ひとみがいつも僕のために一生懸命でいてくれる。そして僕のそばにいてくれる。
それだけで十分なんだ。」
ひとみ「ご主人様…。」
光彦「だからこんなことはもうやめて。僕は普段通りのひとみが一番好きだよ。」
この光彦の優しさにあふれた言葉はひとみの心に染み渡った。ひとみの涙が悲しみの涙から喜びの涙へと変わった。
ひとみ「ご主人様…。ありが…とう…ございます…。うっ…うええ…。」
光彦「よしよし。もう思い詰めちゃだめだよ。ありのままのひとみが一番素敵なんだから、ね。」
自らの腕の中のひとみを優しくなで続ける光彦であった。
そして後日。
ひとみ「ご主人様。」
光彦「ん、何だい?」
ひとみ「これがあたしのありのままの気持ちです。」
そう言ってひとみが渡したのは、2人の出会いにおける思い出の品であるべっこうアメであった。
光彦「そうか…。ありがとう。大切に食べるよ。」
ひとみ「…はい。」
結果的に絆が前より確かなものとなった2人であった。
おわり
「あたしを食べて。」は実は前から言わせてみたかったセリフなのです。「いただきま〜す。」とならせないようにしたのがポイントです。