これは数年前、まだカルテットの4人が見習いだったころのお話である。
当時、カルテットの4人は愛する光彦の元へ転生するべく懸命の修業に励んでいた。
もちろん、カルテットの1人「ゴキブリのあすか」も例外ではなかった。
彼女は全てのことに一生懸命取り組んだ。そして成績もよく、指導担当のなのはの期待も大きかった。
しかし、そのことは一部の見習い、特に愛玩動物を前世に持つ見習いにとっては面白くないことであった。
彼女らは、嫌われ物の極致であるゴキブリを前世に持つ見習いがいい成績であることに怨念に似た感情を抱いていた。そしてその感情は「いじめ」という最悪の形で爆発してしまった。
そのいじめは、まずはあすかの机に「バカ」「死ね」「クソゴキ」といったひどい言葉を書くものから始まった。
あすかは傷ついた。しかし、あからさまな態度に出すことなく、落書き攻撃に耐えた。(あまり騒ぐと面白がられる、と思ったのだろう。)
しかし、あすかの「耐える」という行動はいじめっ子たちの気持ちを逆なでする格好になってしまった。それゆえ、いじめはどんどんエスカレートしていった。
靴に画鋲を入れたり、体育の時間の前に体操着を切り裂いたり、食事にチョークを入れたり…。
こういった攻撃に対しても、あすかは…
あすか「ご主人様…。転生…する…までは…負けません…。」
光彦のことを思い出して、心の支えとした。
もちろん、あすかの味方もいるにはいた。
後に「夢追い虫カルテット」を結成するひとみ・みゆう・まゆりの3人には…
ひとみ「負けないで下さい!」
みゆう「応援してるよ!」
まゆり「わたくしたちはあすかの味方ですわ!」
このように常に励まされ、また、後の「めいどの世界第8サポートチーム」員のつぐみは…
つぐみ「おい、やめろよ!」
いじめっ子たちを強くたしなめた。
さらに、指導員のなのはもただ手をこまねいて見るだけではなく、いじめっ子たちをよく呼び出して、やんわりと注意を与えていた。
しかし、それにもかかわらず、あすかに対する攻撃は日々エスカレートして行った。そして、あすかはついにこのような屈辱を受けるまでになってしまった!
それは、水泳の時間の後のこと。プールから更衣室に帰ってきたあすかは、ある異変に気づいた。」
あすか「あ、あれ…?下着…?」
確かにしまっておいたはずの下着がきれいさっぱり消え失せ、普段着のワンピースのみがそこに残されていたのである。
(また…やられましたか…。)
あすかは、すぐにそれをいじめだと察知した。しかし、それを表に出すことはなく、残りの時間をワンピースの下全裸という状態で耐えた。
そして、その日の分の全ての修業が終わり、部屋に帰ろうとした時、事件は起こった。
リーダー「ふふふ…。」
いじめっ子の集団に囲まれたのである。
リーダー「ふふふ…。ノーパンなんてずいぶんはしたないわねえ、ゴキブリ娘。」
あすか「やはり…あなたたち…でしたか…。」
リーダー「だったらどうするの…?ねえみんな、ゴキブリ娘のステキなお尻を見てやって!」
その言葉と同時に、手下のうちの2人があすかの片腕ずつを抑えて自由を奪い、その上でリーダーがあすかのスカートをめくり上げ、あすかの大事な部分を全て露にした!
そしてあすかにとっての屈辱の時間が始まった。
手下A「ふふ、ゴキブリのアレって、こんなんなってんだ。」
手下B「さすがゴキブリ、不潔ねえ。」
いじめっ子集団は、このように非道な言葉を浴びせながら、スカートを高々とめくられた状態のあすかをなめるように見つめていた。
このような状況でも、あすかは必死で耐えていた。しかし、さすがのあすかもこのような屈辱は我慢の限界を超えることであった。
あすか「う…う…。」
あすかの目が涙で潤み始めたその時!
リーダー「ねえ、今日はこれくらいにしてあげましょう。」
手下A「そうですね。」
手下B「命拾いしたわね、ゴキブリ娘!」
この状態に飽きたのか、いじめっ子はあすかを解放したのであった。
解放されたあすかは、いじめっ子たちが自らの視界から消えるのを確認した。すると、今まで抑えられてきた悲しみが一気に噴出した!
あすか「う…う…うわーん!」
あすかは泣きながら部屋へと帰った。そして部屋でも泣いた。
あすか「う…ご主人様ぁ…。早く逢いたい…逢いたいよ…。うえっ…えっ…。」
その日、あすかは朝まで泣きあかした。
この事件以来、あすかの雰囲気はさらに暗いものとなった。さらに、いじめに対する耐久力も目に見えて落ち、いじめられるとすぐに泣き出すようになった。
あすかのこのような変化は、いじめっ子たちに更なる「いじめがい」をもたらした。そして、いじめはさらに悪質化していった。
そんな中、あすかはトイレに行く機会があった。そして、トイレの個室に入ると…
手下A「あ、ゴキブリがトイレに発生したわ。」
手下B「不潔ー。」
手下C「駆除してあげましょう。」
外からこのような声が聞こえてきた。そして次の瞬間、あすかの入っている個室の中へ放水を始めたのである!
あすか「や…やめて下さい…。」
傷だらけの心のあすかは、こらえきれずにすぐに泣き出した。
手下D「ゴキブリは駆除!駆除!」
リーダー「もっとやっておしまいなさい!」
いじめっ子たちは調子に乗った。
しかし、今回のいじめには今までと決定的に違う点があった。
なのは「トイレが騒がしいですね…まさか!」
ちょうどいいタイミングで指導員のなのはが通りがかったのである。
なのは「あっ!皆さん何をしているのですか!」
なのははとうとういじめを現行犯で押さえることができた。もう怖いものはない。というわけでなのははいじめっ子とあすかを指導室へと連れて行った。
指導室で、なのははいきなりいじめっ子たちに平手打ちを見舞った!あの温厚ななのはが体罰に訴えるのだから、どれだけ怒りが激しいか分かろうというものであった。
なのは「みなさん、いいかげんにしなさい!これから守護天使になろうという人たちがいじめをやるなんて、最低ではないですか!そんなことも分からないのですか!」
さらになのはは続けた。
なのは「それに、たとえ前世が何であっても、ご主人様を思う気持ちは同じのはずです!あなたたちだって守護天使を目指す者でしょう?それくらい分かるでしょう!謝りなさい!そしてもう二度といじめをしないと誓いなさい!」
なのはに促され、とうとういじめっ子たちはあすかに詫びを入れた。
いじめっ子一同「…ごめんなさい。」
なのは「よろしい。今度いじめをしたら、こんなものではすみませんから、覚悟しておきなさい。」
こうして、あすかに対するいじめは解消された。やはりいじめっ子たちも守護天使見習い、これ以上のいじめはいけないと分かったのだろう。
いじめられなくなったあすかは明るさを取り戻した(それでもやや陰を背負った雰囲気は変わらなかったが)。明るさを取り戻したあすかはさらに修業に打ち込み、見事に転生を果たすのであった。
そして、修業時代からずっと心の支えだった最愛のご主人様・光彦とは…
あすか「ご主人様…今日は…何を…食べたい…ですか…?」
光彦「そうだねぇ…。」
今も一心同体なのであった。
おわり
あすかメインのネタを作ろうとすると、どうしてもこういう傾向になってしまうのはある意味仕方ないのかもしれません。