ある朝、光彦が目覚め、立って伸びをすると、何かがおかしいことに気がついた。
何やら、視界が普段より低くなっていたのである。あたかも背が縮んだかのようであった。
(何なんだ…?)
不審に思った光彦は、視線を下へと向けた。すると、もっとおかしいことに、足元が見えなくなっていたのである。「あれ?」と思って胸の辺りを撫でてみると、やけに柔らかい。
(まさか!)
光彦にはある恐ろしいことが頭に浮かんだ。それを確かめるためにズボンの中をのぞくと、恐れていたことはしっかり現実となっていた。
何と、そこにあるべき存在、つまり光彦の男性自身がきれいさっぱりなくなり、代わりに女性自身が存在していたのである!
光彦「ぎゃああああっ!」
ひとみ「どうしたのですか?」
あすか「何ですか、一体?」
光彦の叫び声を聞き、カルテットの4人が慌ててやってきた。
光彦「ああ、みんな!何が起こったかって?それは見たほうが早いよ。」
パニックになっていたせいか、光彦はすぐさま自分の着ていたパジャマや下着を脱いでしまった!
みゆう「きゃっ!」
ひとみ「ご主人様!」
4人は恥ずかしがって目隠しをした。しかし、少しして、恐る恐る目隠しを解くと、事態を完全に飲み込んだ。
ひとみ「ご主人様…女の子?」
まゆり「しかもすごくきれいな体ですわ…。」
みゆう「すごーい…。」
あすか「そんなこと言っている場合ではないですよ!何でこのようなことが起こったのか…ご主人様、何か心当たりはありますか?」
あすかが至極もっともな疑問をぶつけた。しかし、光彦にもそれは分からない。
光彦「僕も分からないんだ…。何でだろ…。て言うかそれよりも、この状態を何とかしないと…。」
それ以上裸でいたくない光彦はそう言った。しかし、下着無しでパジャマを着る、というのも気が進まない。そこで、背が縮んだ光彦と身の丈が似ているあすかの下着(一応洗濯済みのもの)を着ることになった。しかし…
光彦「きついな…。特にブラジャーが…。」
あすか「え?」
衝撃の事実が明らかとなった。
そこで、ひとみが光彦の体を採寸することとなった。すると衝撃はもっと大きくなった。
ひとみ「えーと、上から88、58、86で…カップサイズはEですね…。」
つまり、今の光彦はカルテットの4人の誰よりもナイスバディーなのであった。カルテットは衝撃を隠しきれなかったが、それでも光彦をほめた。
ひとみ「ご主人様、今すごくいい体していますね。」
みゆう「ホント、すごいナイスバディーだよね!」
あすか「ちょっと…ショック…です…。」
まゆり「そうですわね…。しかし困りましたわね…。ということは、今ご主人様のサイズにある下着がここにないということですから…。スーパーや洋品店はまだ開いていませんし…。」
まゆりは悩んでいた。しかし、すぐに何かを思いついたような表情となった。
まゆり「そうですわ!」
光彦「何だい?」
まゆり「まあ私に任せてください。」
そう言うと、まゆりはさらしと着物一式を取り出した。
まゆり「とりあえずわたくしの着物をお貸ししますわ。下着については…さらしだけで我慢して下さい。まあ着物の時はパンツを穿かないのが正式とも聞きましたし…。」
光彦「そうか…。じゃあよろしく頼むよ。」
というわけで、臨時の着物の着付け作業が始まった。
まゆり「今のご主人様は着物を着るには胸が大きすぎますわ。というわけでこれを巻いて下さい。」
光彦「さらしか…。でもきついよこれ…。」
まゆり「我慢して下さい!」(光彦のナイスバディに少し嫉妬している)
光彦「う…。(怖い…。)」
まゆり「さらし、巻きましたね。そうしましたら、まずは長じゅばんを着てください。」
光彦「なるほど…。」
面倒くさい過程は省かせていただくが、とりあえず光彦はまゆりの助けを借りて着物姿となったのであった。
光彦「どうかな?」
実は、光彦自身は気づいていなかったが、光彦の顔は、女性化前の面影をとどめ、なおかつ大変な美人といえるものとなっていた。おまけに、髪の毛も少しだけ伸びていた。
というわけで、光彦の着物姿は、本家のまゆりに勝るとも劣らぬ美しさであった。カルテットの4人は「ぽっ」となった。
ひとみ「すごいです…。」
あすか「きれい…。」
みゆう「まゆりちゃんより可愛いね。」
まゆり「みゆう!…しかし、それは認めざるをえませんわね…。さすがご主人様ですわ。」
光彦「(鏡で見て)なるほど、これは確かに自分ではないようだな…。でも確かに僕はこうして生きて動いている…。」
光彦は妙な感覚を覚えていた。
やがて、スーパーの開く時間が来て、みゆうが先ほどの採寸を基に光彦の下着を買ってきた。そのため、光彦は着物姿でいることをやめ、新しい下着を着けた。
光彦「いやー、着物はきつかった。まゆりはすごいなー、いつもこんなのを着ているなんて。」
まゆり「いえ…それほどでも…。」
光彦「ところで、次に僕は何を着ればいいわけ?」
その光彦の質問に「待っていました!」と言わんばかりの勢いで答えたのはひとみとあすかであった。
ひとみ「それなら心配ありませんよ。」
あすか「わたしが…こうして…服を…出しました…。」
ひとみとあすかは大量の服を抱えていた。
光彦「2人とも…。何だい、その服の山は?」
ひとみ「これですか?この服はあすかさんがコスチュームチェンジの能力を使って出したものです。」
あすか「女の子になった…ご主人様の…可愛い姿を…たくさん…見たいと…思ったのです…。」
光彦「なるほど…。道理でさっきから2人の姿が見えなかったわけだ…。でもこうして女性化したわけだから、可愛い服着るのも悪くはないな…。」
光彦はまんざらでもないようであった。
かくして、光彦の臨時ファッションショーの幕開けと相成った。
第一回目の服装は、まずはこれから、という感じのセーラー服であった。
みゆう「ご主人様、かわいー。」
ひとみ「何か、メガネやご主人様の真面目な感じとすごく合っていますね。セーラー服って。」
光彦「ありがとう。でもやっぱり胸の大きさと合ってない感じがするな…。こうナイスバディーだと清純さがね…。やはりセーラー服はひ…。」
まゆり&あすか&みゆう&ひとみ「……………。」
光彦は、カルテットの4人に冷たい視線を浴びせられ、セーラー服談義を中断せざるをえなくなった。
続いては、カルテットにとっての基本、メイド服である。
あすか「いい感じ…です…。」
まゆり「このまま守護天使になっても通用しそうですわね。」
光彦「確かにね…。こんなメイドさんだったら来てくれてもいいな。あ、だったら自分で自分のメイドをやればいいか、ははっ。」
顔に似合わない大笑いをする光彦であった。
続いては、体操服姿(下はスパッツ)の披露である。
みゆう「あ、これもかわいい。」
ひとみ「でも、こうしてみるとやはりご主人様は体育会系ではないですね。どこかちぐはぐしているんですよ…。」
光彦「そうねえ…。でも僕、運動はそれほど苦手じゃなかったんだけどね…。」
このように、ファッションショーは続いていったが、こういった場面においては、着る服がだんだん過激になっていくのが世の常である。
前半は「ブラウスとロングスカートの文学少女調」や「白のフリフリワンピース」といった比較的まともな服装が主流であった。しかし、回を重ねるごとに「ミニのプリーツスカートを軸としたアイドル調」や「昔なつかしのアムラー」という感じで露出が増えていった。
そしてとうとうバニーガール、ワンピースの水着と来て…
光彦「ちょっと、これはさすがに恥ずかしいなあ…。」
体を隠す面積が極端に狭い大胆なビキニの水着へと至ったのであった。
ひとみ「そんなことはありませんよ!」
あすか「はい…。」
みゆう「ご主人様セクシーだもん。これくらい大胆になってもいいよ。」
まゆり「そうですわ。今のご主人様は水辺のヒロインですわ。」
光彦「そうかな…。」
カルテットにほめられた光彦は今まで感じたことのない「女性的な喜び」をかみしめ、妙な興奮を覚えていた。というわけで、
みゆう「ねえ、セクシーポーズしてみてよ。」
このようなリクエストにも喜んで応えるのであった。
さて、このようなことを繰り返しているうちに、5人はファッションショーに飽きてきた。そこで、5人は街へ繰り出すことにした。なお、光彦の服はスーツ調のものとなった。その服装によって、光彦は「セクシーかつ知的なキャリアウーマン」という感じの見た目となった。
街へ繰り出した5人は、早速人気者となった。何せ、守護天使4人組という美少女軍団に加え、今日は光彦も美女となっている。というわけで、5人はほとんど数分おきにナンパされることとなった。
5人の中での一番人気は、美人の女性となった光彦であった。その理由は、スーツっぽい服を着てメガネをかけている風貌とEカップのナイスバディーのアンバランスさが受けたからであった。
男性「ねえそこのメガネの彼女、僕と一緒に遊ばない?」
光彦「え…あの…その…。」
当然若い男性にナンパされることも多いのだが、そういう時、光彦は決まって困惑した。何せ、若い男性からナンパされることは初めての経験であり、そもそも光彦にはナンパの経験もなかったのである。
困惑する光彦に助け舟を出すのは、当然カルテットの4人なのであった。
ひとみ「待ってください!」
あすか「この人は…ナンパ…禁止…です…。」
男性「ナンパ禁止?」
みゆう「だってこの人はあたしたちの一番大切な人だもん!」
まゆり「その通りですわ!」
光彦「え…あの…まあ、そういうわけですので、わたしのことはあきらめて下さい。」
男性「そうですか…。(いいなあ…。大切な人か…。)」(百合的な考えを浮かべて心地の良い気持ちになっている。)
このようにしてナンパの連続攻撃をかいくぐりながら、5人はかわいい服や小物、あるいはアクセサリーを見たり、喫茶店で食事をしたりといった「女同士の楽しいひととき」を思う存分満喫した。また、家に帰っても、5人はおしゃべりに普段と違った形で花を咲かせるといった楽しみを得た。
楽しい時間はすぐ過ぎる。あっという間に寝る時間がやってきた。光彦は、その日の楽しい思い出を胸に抱きながら、充実した気持ちで床に就いた。
(女の子同士もいいものだな…。)
とここで、光彦の枕元にひとみがやってきた。
ひとみ「ご主人様…。」
ひとみは、やけに色っぽい笑顔で光彦を覗き込んだ。
光彦「ひとみ?」
ひとみ「あの…ご主人様、せっかくあたしたち女同士になったことですし、あたしといいことしませんか?」
ひとみのほのかに恥ずかしそうな表情、そしていやらしく動く指のせいで、ひとみの望んでいることはすぐに理解できた。
光彦「あの…その…僕は遠慮するよ…。」
ひとみ「そんなこと言わないで下さいよ!あたしはウマいですから!悪いようにはしませんから!」
光彦「やだよ!そんなこと困るよ!お願いだからやめてよ!」
光彦「…ひとみ…。お願いだからそれはやめてくれ…。」
みゆう「ご主人様、何かうなされてるね。」
あすか「ひとみちゃん…何か…ご主人様に…変なこと…しましたか…?」
ひとみ「まさか!」
みゆう「ねえ、ご主人様起こしたほうがいいかなあ?」
まゆり「それは難しいですわね…。」
うなされる光彦を心配そうに見守るカルテットであった。
考えてみれば、たとえメガミ様であってもご主人様の性別を変えることなどできやしない。というわけでこの話は夢の途中で幕を閉じるのであった。
おわり
「女性のご主人様と女性の守護天使という組み合わせはどんなものか?」…そう思って書いたのがこの作品です。
女同士というのは不思議な魔力があると思うのですが、どうでしょうか?