しばらくして、光彦は起きた。光彦の健康状態は、風邪はまだ治ってはいなかったものの、少しは回復していた。
光彦が起き出すのを待っていたかのように、あすかが入ってきた。
あすか「ご主人様…大丈夫…ですか…?」
光彦「あすか…。」
あすかは着替え一式やバスタオル、それに新しい濡れタオルを持っていた。
あすか「ご主人様…汗…かいて…いませんか…?」
光彦「あ、うん…ちょっと…。」
あすか「わたしが…拭きます…。で…そのこと…なんですが…。」
あすかの顔がぽっと赤くなった。
あすか「その…服を…脱いで…いただけませんか…?」
光彦「え…?」
あすか「汗…放っておくと…風邪が…悪化…します…。」
光彦「そうか…。」
そこで、光彦は上半身裸となった。そして、あすかはその状態の光彦の背中や胸板を拭いた。
あすか「気持ちいい…ですか…?」
光彦「うん…。」
あすかは、光彦の体を拭いた後、光彦に替えの下着を着せた。
着替えの後に、あすかは光彦を寝かせ、その額に新しい濡れタオルを乗せた。
あすか「ご主人様…これで…大丈夫…です…。」
光彦「ありがとう…。いい気持ちだった…。」
あすかのサービスはこれにて終了した。
そして、夜がやってきた。光彦は再び眠くなってきた。そこに登場したのがまゆりであった。
まゆり「ご主人様…大丈夫ですか?」
光彦「うん、みんなのおかげでだいぶよくなったよ…。でも、まだ完治はしてないかな…。さっきは汗をかいたけど、今はちょっと寒気がするよ…。」
まゆり「そうですか…。寒いですか…。」
その言葉を最後に、まゆりは黙り込んだ。黙り込むと同時に、シュルシュルという奇妙な音が光彦の耳に入ってくるようになった。
(何なんだ…?)
光彦には疑問であった。そして、音がやんだ後にまゆりのほうを見た時、光彦は驚いた。
そこには、ショーツのみを身にまとい、両手で胸を隠して恥ずかしそうに顔を赤らめて立っているまゆりの姿があったのである!
光彦は、まゆりの姿を見て困惑した。普段ならばまゆりのフェロモンパワーの前に鼻血を出してしまうところであったが、その時は疲れていたので困惑するだけにとどまった。
光彦「まゆり…一体どうしたんだい…。」
まゆり「ひとみから聞いたのです。ご主人様がひとみを裸になって暖めてくださったことを…。今度はわたくしがご主人様を暖めてさし上げる番ですわ…。」(これについては第16話参照)
光彦「まゆり…。」
まゆりは上品さや色っぽさをたたえたゆったりとした動きで光彦の布団の中へと入った。そして、光彦をやさしく抱きしめるのであった。
(ご主人様…早くよくなって下さい…。)
まゆりは願いを込めながら光彦を抱いた。
一方、光彦は、裸のまゆりに抱きしめられてますます困惑していた。
(ちょっと…。こんなことされたら…逆効果だよ…。)
光彦の心臓は今にも爆発しそうであった。しかし、不意に光彦の体と心にある変化が現れた。
(あれ…どうしたんだろう…。とっても気持ちいい…。)
それはまゆりの心臓の音や体温、そしてまゆりの優しい気持ちがその素肌を通して光彦に伝わった結果であった。
(あったかくて…それにやわらかい…。とっても安心できる…。)
光彦は安らかな気持ちになった。そして、そのまま緩やかに眠りについたのであった。
そして翌朝。
光彦「あー、よく寝た。」
光彦は目覚め、布団から出て大きく伸びをした。その体は、昨日の不調がウソであったかのような絶好調ぶりであった。
(おお、よくなっている…。これもみんなのおかげだな。)
そんなことを考えていると、不意に甘い感じの声が光彦の耳に入ってきた。
まゆり「ご主人様…むにゅ…早くよくなって下さい…。」
それはまゆりの寝言であった。光彦は、寝言でまで自分のことを心配してくれるまゆりの優しさがうれしかった。
(まゆり…ありがとう…。)
とここで、
まゆり「あ…朝ですね…。」
まゆりも目覚めた。そしてしばらく辺りを見回した後、元気そうな光彦を見つけ、心底ほっとした様子になった。
まゆり「あ、ご主人様。よくなったのですね。良かったですわ…。」
光彦「ああ。これもみんなのおかげ…はっ!」
光彦の顔がぽっと赤くなった。まゆりにはそれが不思議だったが、その原因が自分の裸であることに気づくと、急に恥ずかしくなった。
まゆり「え…あ…きゃっ!」
まゆりは慌てて胸を隠した。その様子があまりにも色っぽく、また、光彦の体調が完全に戻っていたこともあり、光彦は鼻血を出して倒れてしまった。
光彦「ハ…ハダカ…。」
まゆり「あ、ご主人様!皆さん大変ですわ!ご主人様が!」
もはや完全に普段の日常を取り戻した日高家であった。
おわり
看病こそ、守護天使の本領発揮の場でしょう。あまりお目にかかれないシチュエーションだと思うのですが。
そして、どうしても書きたかったのが、まゆりが光彦を暖めるシーンなのでした。