夢追い虫カルテットシリーズ

VOL.34「Dr.ヒロシの驚異の大発明 ~内用~」

饗介「くそ〜、この前はひどい目に遭ったぜ!」

饗介は、前回同様、洋の研究ルームにいた。そして、未だに「触手大暴走」について不満があるのであった。

饗介「もうあんなことは二度とごめんだからな!」
洋「いや、あれについては悪かった。…ところで、また新しい発明を考えたのだが…。」

その言葉に、饗介は今までの不満を忘れたかのような明るい表情になった。

饗介「いよっ!やってくれましたね!こーの天才発明家!」
洋「…お前けっこう現金な奴なのな。まあいい、では今回の発明品を発表しよう。」

そう言って取り出したのは、またしてもビンに入った粒であった。しかし、今回は、ビンは2つあり、その中に入っている粒もそれぞれ色が違っていた。

饗介「これは?」
洋「これは簡単。超強力ホレ薬。」

ホレ薬とはまた古典的なアイテムではある。しかし、饗介には十分魅力的であった。

饗介「ホレ薬?」
洋「そうだ。すごいだろ。」
饗介「おう。で、どうやって使うんだ?」

饗介はわくわくしながら質問した。というわけで洋はそれに答えた。

洋「まずは、このビンに入っている赤い薬。これがホレ薬の本体だ。これを飲ませると、飲んで初めて見た人物の恋の奴隷となるわけだ。」
饗介「それはすごいな。」
洋「もうそれは盲目に。」
饗介「で、こっちのビンのは何なんだ?」
洋「この青い薬は、ホレ薬の中和剤だ。このホレ薬はかなり強力で、ちょっとやそっとのことでは効き目が切れない。だからこの中和剤を上手く使うことが勝利の鍵だ。」
饗介「なるほど。」
洋「この薬のセットがあれば饗介も恋愛の帝王だ!」
饗介「すげー…。」

饗介の脳裏に、ホレ薬の力で饗介しか見えなくなっているまゆりの姿が浮かんだ。

饗介「じゃあ早速使わせてくれ!」
洋「それなんだが…ひとつだけ言っておきたいことがあるんだ…。」

急に洋はすまなそうな顔をした。

洋「実はこの薬、道行く人数人にだまして飲ませたくらいで、まだ十分な臨床実験をしていないんだ。というわけで、薬の効き目が暴走するかも分からなかったりするわけだよ。」

その言葉に、饗介は不満の意を示した。

饗介「おい、それじゃ前回と変わらないじゃないか!」
洋「だから中和剤は作ってある。…まあがんばってくれ。」
饗介「OK。」

こうして饗介は、機嫌を直し、ビンをつかんで街へと出て行った。

街で饗介が探すのは、やはりまゆりであった。

(まゆりちゃんを俺の恋の奴隷にしてやるぜ!)

饗介は燃えた。そして目をらんらんと輝かせながらまゆりを探した。
そして、その成果があったのか、ついに街を行くカルテットの4人を発見したのであった。

一方そのころ、研究室に一人残された洋は、部屋の整理をしていた。そして、整理中にあるものを発見した。

洋「何だ中和剤か…って何!」

そう、饗介は洋の忠告にも関わらずホレ薬の中和剤を忘れてしまったのである!

洋「まずい!とにかくあいつを探さないと!」

洋は慌てて街へと飛び出していった。

再び饗介に話を戻そう。カルテットを発見した饗介は、まゆりに薬を盛るチャンスを静かにうかがっていた。
その後しばらくして、まゆりが大きくあくびをした。

饗介「よし今だ!」

饗介は薬を念力でまゆりの口に向かって送り込んだ…はずであった。
しかし、そのとき、急に突風が吹き、薬の軌道がそれ、カルテットの隣を走っていた今人気の格闘家ボブ・サップを思わせるむくつけきマッチョマンの口に飛び込んでしまった。

饗介「まずい!中和剤!」

饗介は中和剤を取り出そうとした。しかし、そのときになって初めて自分が中和剤を忘れてしまったことに気がついたのである!

饗介「な、無い!」

饗介はあせった。そしてあせって顔を上げると、何とさっきのマッチョマンが至近距離にいたのである。

饗介「あ…目が合っちゃった!」

まずい事態を想像した饗介はその場から立ち去ろうとした。しかし…

マッチョマン「坊やぁ〜、ちょっと待ってぇ〜ん。」

なぜかおねえ言葉を使うマッチョマンに腕をつかまれてしまった。

饗介「な、何でしょうか…?」
マッチョマン「ふふふ…坊や、可愛いわね。あたしが愛のレッスンしてあげるわ。一緒に行きましょう〜ん。」
饗介「いえ、けっこうです…。」
マッチョマン「遠慮しないで〜ん。」

かくして、饗介はマッチョマンに連れ去られてしまった。

饗介「た、助けてくれぇ〜!」
みゆう「あの叫び声、ハエの人のじゃないの?」(カルテットは少し遠くにいます)
まゆり「そんなことわたくしたちの知ったことではありませんわ!」(饗介の今までの仕打ちを思い出して言い方がきつくなっている)
あすか「そう…ですね…。」
ひとみ「じゃああたしたちは行きましょう。」

饗介はマッチョマンに連れられ、そして…

一方、街へ飛び出した洋は、懸命に饗介を探した。
そして、とあるラブホテルの前を通りかかると、聞き覚えのある叫び声がかすかに聞こえてきた。

饗介「助けてくれぇ…。マッチョは嫌だぁ…。」
洋「あちゃー…遅かったか…。」

洋は饗介救出のため、慌ててラブホテルに入ったのであった。
その後、この「ホレ薬事件」に関わった男性3人がどうなったかは、作者の知るところではない。

おわり


発明編の2回目です。ホレ薬パニックはありがちですが、それでもやはり饗介には失敗させたかったので。


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