光彦「ただいま。」
光子(母親)「あ、光彦じゃない。お帰り。ずいぶん久しぶりじゃないの。」
光彦「まあ帰ってこいって言われたしね。顔見れば安心するでしょ?」
光子「そうね。とにかくあがって。」
光彦は家へとあがった。そして、母親との会話もそこそこにかつての自分の部屋へと入った。
そこで、再びカルテットを通常形態へ戻させるのであった。
みゆう「あー。」
ひとみ「やっと戻れました。」
光彦「で、浜松はどうだった?」
ひとみ「さすがにご主人様やあたしたちの故郷だけあっていい街ですね。」
まゆり「そうですわ。それにわたくしたちゆかりの場所も見ることができましたし。」
みゆう「ホントだね。」
このように喜ぶ3人に対し、あすかだけは少し悲しそうな表情であった。
光彦「あれ、あすかは楽しそうじゃないね。どうしたの?」
あすか「わたしだけ…まだ…故郷を…見て…ないです…。」
みゆう「あ、確か台所だっけ?」
光彦「台所かあ…。それについては夜になるまで待ってて…。」
とここで、不意にドアがノックされた。
光子「光彦、ちょっと開けなさい。」
光彦「まずい!ちょっとみんなぬいぐるみになってよ!」
光彦は、カルテットをぬいぐるみにさせ、その上でタンスの中に隠した。
光子「さっきからぶつぶつ言っているけど…何かあったの?」
光彦「別になんでもないよ。」
光子「そう。ならいいけど…。それにしても変ね…。」
母親は首を振りながら去っていった。
光彦「ふーっ…。」
光彦はほっとした。
そして、両親と夕飯を食べたりした後の深夜、光彦はカルテットを通常形態へと戻した。
光彦「じゃあ、みんな行くよ。」
光彦以下5人はこっそりとあすかの故郷である台所(家は改築されていないので)へと向かった。
そして台所にて。
光彦「どうだい、感じとしては。」
あすか「懐かしい…です…。」
みゆう「どう、まだ仲間いそう?」
あすか「はい…。気配が…します…。」
あすかは台所内をきょろきょろと見回した。すると、
あすか「あっ!」
そこには母親が仕掛けたものと見えるゴキブリホイホイがあったのであった。
あすか「まだ…新しい…です…。誰も…入って…いません…。お願いです…ご主人様…。捨てて…下さい…。仲間を…いじめないで…下さい…。」
光彦「え、でも…。」
あすか「お願い…。」
あすかは今にも泣きそうな表情であった。
まゆり「わたくしからもお願いします。」
みゆう「あすかちゃんの言うとおりにしてあげて。」
ひとみ「このままではあすかさんがかわいそうです。」
カルテットの他の3人も瞳をうるませて頼み込んだ。
そのしおらしい様子に、光彦の心は揺らいだ。ということで、
光彦「分かったよ。捨てるよ。」
あすか「ありがとう…ございます…。」
心底うれしそうな様子のあすかであった。
(これでは仕方ないな…。ごめん、母さん!)
こうして、生命の救済と日高家の台所の衛生状態の悪化に貢献しつつ、5人の浜松の夜は更けていくのであった。
おわり
30話記念ということで、里帰りです。ちなみに私は浜松に行ったことはありません。