光彦が持っていたのは、紛れもなくまゆり人形と「人形の魔術」であった。
では、何があったのか説明しよう。
まゆりの衣服が全て脱がされた時、光彦とまゆり以外のカルテットは逆襲について目で話し合い始めた。
光彦(あいつは今まゆりの裸に気を取られている。今のうちに本と人形を奪おう!)
ひとみ(で、誰がですか?)
光彦(人形はあすかが、本はみゆうが奪うんだ。)
あすか(…はい。)
みゆう(分かったよ!)
光彦(よし。くれぐれも声を立てないようにね。)
これらの会話を目だけでやってしまったのだから、光彦とカルテットのチームワークには恐れ入る。そのアイコンタクトの技術は、2002年FIFAワールドカップでベスト16という快挙を成し遂げた日本代表顔負けであった。
光彦「形勢逆転のようだな、ハエ男。」
饗介「(まずい…。)くそっ、今日のところは引き上げだ!」
饗介が逃げようとしたその時、
ひとみ「逃がしません!」
ひとみが饗介の後頭部にしがみつこうとした。しかし、
饗介「うわっとっと!」
饗介はどうにか交わして日高家から逃走したのであった。
光彦「くっそー、逃がしたか…。それにしてもこれらのものはどうしようか…。」
光彦が悩んでいるのは、「人形の魔術」の本やまゆり人形の処遇であった。
光彦「お祓いして捨てようか?」
まゆり「待って下さい!」
不意に、着物をはおって自らの裸体を隠しているまゆりが声を発した。
まゆり「ひとみ、さっきあいつの髪の毛を取れませんでしたか?」
ひとみ「えっと…あ、ありますあります。」
まゆり「ちょっとそれを貸していただけませんか?」
まゆりはいつになく邪悪なほほえみを浮かべていた。
光彦「まゆり…君まさか…。」
しばらくして…
まゆり「さあ、あいつの人形が出来上がりましたわ…。どうしてやりましょうか…。そうですわ、しゃぶしゃぶの刑に処してあげましょう。」
そう呟くと、まゆりは湯を沸かし、それを饗介人形にかけた。
饗介「う、あ、あっちー!」(どこか遠くにいます)
湯をかけているまゆりは、まるで狂人のようにハイになっていた。
まゆり「おーっほっほっほ!苦しみなさい!おーっほっほっほ!」
饗介「あち、あち、あっちー!」
今までの恨みを一気に晴らそうとするまゆりは、いつものおしとやかさをもはやかなぐり捨てていた。
(こりゃ僕が粗相をしたらあばら骨5、6本じゃ済まないだろうな…。)
狂ったように笑い続けるまゆりに対し、光彦はただ恐れを抱きながら見守ることしかできなかった…。
おわり
まゆりのリベンジ&多重人格的まゆりです。仕返しできてハッピー?