そんな感じで日々が過ぎていったが、しばらくした後に事件は起こった。
夜に、光彦が布団の中で目を覚ますと、枕元に包丁を構えたさとみがいることに気付いた。そしてさとみは光彦めがけて包丁を振り下ろしてきたのだ!
さとみ「人間め、死ね!」
光彦「わっ!」
光彦は、さとみの包丁を寸前でかわし、起きあがった。そして、恐怖心を抑えてさとみに声をかけた。
光彦「さとみちゃん…何故そんなことを…。」
さとみ「実はわたしは人間なんか大嫌いなの!」
さとみの口調は今までにないほど鋭かった。
光彦「え…?」
さとみ「わたしが羽化したての頃、ひとみお姉ちゃんにアメをくれた優しい男の子の話を聞いたの。」
光彦は、(自分だ…。)と思った。しかし、今そのようなことを言ってもさとみの心を動かすことはできないと思い、黙っていた。
さとみは続けた。
さとみ「わたしはお姉ちゃんが大好きだった。だから、その話を聞いた時は『ああ、人間ってなんて
優しいんだろう。』と思った。だけど、その優しかったお姉ちゃんが…大好きだったお姉ちゃん
が…。」
とここで、さとみの目から涙がこぼれてきた。
さとみ「わたしの目の前で人間に踏まれて死んじゃった…。わたしは悲しかった。でもその時は何とか自分を奮い立たせたの。でも…」
さとみの目に、憎しみに満ちた悲しい光が映し出された。
さとみ「…そんな矢先、わたしはプラスチックのケースに入った粒みたいなエサを巣に持ち帰ったの。
それを食べてしばらくして、巣の仲間が苦しみだした。やがて、女王様も、姉も、妹も、みんな
みんな死んじゃった。そのエサが『一見エサだけど実は巣ごと全滅させる殺虫剤』だということ
に気付いたのは、死んでからしばらくしてからだった。」
さとみの語気はさらに強まっていく。
さとみ「わたしは人間に復讐することを誓った!人間なんてみんな殺してやる!まずお前からだ!」
光彦「う…うう…。」
光彦には、かける言葉が見つからなかった。
とその時、まゆり、あすか、みゆうの3人が起き出してきた。だがあまりのことにどうして良いのか分からない。
さとみ「死ね!」
光彦「わああっ!」
ついにさとみが光彦に包丁を突き立てて突撃してきた。
(もう、ダメか…!)
光彦や3人がそう思ったその時!
ひとみ「ご主人様、危ない!」
最後に起きてきたひとみが光彦をかばうようにしてさとみと光彦の間に割り込んだ。さとみの包丁がひとみのお腹に突き刺さった。