あの「まゆりの必殺ボーイハント」から数日の時が流れた。
饗介「まゆりちゃん、ちょっと…。」
不意に、まゆりの前に饗介がやけに穏やかな雰囲気をたたえてやってきた。
饗介「話があるんだ。ちょっと公園に来てくれないかな?」
まゆり「な、何ですの…。」
饗介「大丈夫、今日はエッチなことはしないから。」
饗介の穏やかさに少し安心したのか、まゆりは言われるままに公園に向かった。
まゆり「で、話とは何ですか?」
饗介「この写真に見覚えはないかな?」
まゆり「!」
そこに映っていたのは何と、ブラウスやスカートを乱し、色っぽいポーズをとっていたまゆりだったのだ!
まゆり「い、いつの間に…。」
饗介「いやね、あの日偶然見ちゃってさ。後で念写で写したんだよ。」
まゆり「そ、そんな…。」
まゆりは明らかに動揺していた。
饗介「このことが光彦に知れたらどうなるかなー。俺すっごく興味あるなー。」
その時、まゆりの脳裏にある恐ろしい情景が浮かんだ。
光彦「(写真を見て)ふーん、まゆりこんなことしていたんだ。」
まゆり「ご、ご主人様、それは…。」
光彦「こんなえっちな子とは一緒に住めないよ。ここから出てってくんないかな。」
まゆり「そ、そんな…。」
光彦「さあ早く出てってよ。」
まゆり「ご主人様…。」
まゆりは恐怖に震えた。
饗介「カイコのまゆりがホントはエッチないけないコだ、って光彦に思われたくはないよねえー。」
まゆり「そ、それは…そう…ですが…。」
饗介「黙っていて欲しかったら俺の言う事を聞きな。」
まゆり「う…。」
饗介「イヤとは言わせないよ。」
まゆり「は、はい…。分かりました。」
饗介「よろしい。」
光彦に嫌われたくない一心で、まゆりはとうとう悪魔のささやきに耳を貸してしまった。
それからの日々は、まゆりにとって地獄であった。
饗介からの指令は、数日おきに家に届けられる差出人が書いていない灰色の封筒によって行われた。
第一号指令は、「公園に来い」というものであった。
饗介「ようこそ。まあ座って座って。」
まゆり「わたくしに一体何をするつもりですか?」
饗介「胸に触らせてよ。」
そう言うと、饗介はまゆりの着物の懐の中に手を突っ込み、胸をまさぐった。
まゆり「きゃっ!」
饗介「うーん、柔らかくて気持ちいーい!」
この間まゆりは、されるがままになるしかなかった。
続いては、「ラブホテルに来い」という指令がなされた。
ラブホテルにはいい思い出のないまゆりは、身構えてホテルに向かった。
饗介「まあ、今日はコトに及ぶつもりはないから、そう怖い顔しなくてもいいよ。」
まゆり「うう…。」
饗介「その代わりこれらの服を着た姿を写真に収めるけどね。」
そう言って饗介が取り出した服は、スクール水着やベビー服といったかなり歪んだ欲望が反映されたものであった。
まゆり「こ、これを…ですか…?」
饗介「嫌なの?」
まゆり「くっ…。」
なぜか着替えを見られる事はなかったとはいえ、このような変態的服装を写真に収められるのは屈辱であった。しかし、今のまゆりに抵抗する力はなかった。
また、「ミニのプリーツスカートで公園に来い(スパッツ類着用厳禁)」という一風変わった指令が来たこともあった。
まゆり「はい、スカート穿いてきましたわ。」
饗介「ふふふ、確かにこれなら男を引っかけていけない事ができるね。」
まゆり「……………。」
饗介のいやらしい言葉の攻撃がまゆりにじわりとダメージを与えた。
饗介「じゃあこれから逆上がりをしてもらおう。」
まゆり「えっ?」
まゆりは、饗介の指令の内容に驚きを隠せなかった。しかしやるしかない。
まゆり「わたくし…運動は苦手ですのに…。」
元々運動神経が鈍いまゆりにとって、逆上がりなどは無理な相談である。まゆりが逆上がりをしようとするたびに足は空しく空を蹴り、白のショーツがチラチラと見えた。
そして…
まゆり「て、手が痛い…。」
とうとう体力の限界に達し、尻餅をついてしまった。
その際、ミニスカートの悲しさ故、ショーツが完全に露になった。
饗介「おっ、白のパンティーがかわいいね。」
まゆり「い、いや!見ないで下さい!」
まゆりは慌ててショーツが見えないように座り込んだが、饗介はその様子をも楽しんでいるようであった。
その他にも、満員電車にミニスカ&ノーパンで乗せられたり、ノーブラの胸を見せるように強制されたり、ポルノ小説の朗読をさせられるなどの理不尽な指令をまゆりは多数受けた。
このような生活を送っているうちに、まゆりはどんどん生気を失っていった。
顔色は青白くなり、雰囲気は暗くなり、体重も随分と落ちた。
光彦や、カルテットの残り三人は心配になってきた。
光彦「最近のまゆりは一体どうなっているんだ?」
ひとみ「確かに顔色が悪いですね。」
あすか「健康を…損ねている…ようですし…。」
みゆう「何か胸も小さくなっちゃったみたいだよ。」
光彦「と言うより何かにおびえちゃいないか?」
あすか「事情を…聞いてみましょう…。」
と言うわけで、光彦ら四人はまゆりを問いただした。
初めのうちはまゆりは口を閉ざしていた。もし今の事を話したら光彦に嫌われるのではないか、と恐れたからである。
しかし、このままでは饗介に大事なものまで奪われかねないと思ったこと、また、四人の粘り強い説得もあって、とうとうまゆりは全てを話した。