なのは「大丈夫ですか、松井さん?」
松井さん「君は…どうして私の名を…?」
なのは「まあ立ち話もなんですから、落ちついてから色々お話しましょう。」
そう言って、なのはは松井氏を伴って公園へと向かった。
そして公園にて。
松井さん「先ほどは助けていただいて、どうもありがとうございました。」
なのは「いや、わたしが昔していただいたことに比べれば…。」
松井さん「え?」
思いもよらぬ一言に、松井氏は戸惑った。
なのは「あの日…あなたはわたしに光を与えてくれました。その優しさが今のわたしを作ったのです。」
松井さん「……………。」
なのは「わたしは今、あなたのような優しい人に少しでも幸せが舞い降りるように頑張っています。この地球上に優しい心がもっともっと増えるように…。そして…。」
松井さん「そして…何ですか?」
なのは「一度でいいからあなたのことを『ご主人様』と呼びたかった…。」
そう言うと、なのはは感極まったこのように立ち上がり、走り去って行った。
(さよなら松井さん…。さよならわたしの思い出…。さよなら…。)
なのはは泣いていた。抑えきれない思いが心の底から沸き上がり続けていた。
一方、松井氏の手元には、どこから出てきたのか夏みかんが残されていた。
夏みかんを見た瞬間、松井氏は33年前の出来事を思い出した。そして、なのはの正体を悟った。
(大きくなったんだね…。立派になったんだね…。)
残された夏みかんをぎゅっと抱きしめる松井氏であった。
その頃、なのははいつの間に戻ってきたのか、光彦の家のそばでぼーっとしながら歩いていた。
(これからわたしはどう生きればよいのだろう…。)
今まで感じたことのなかった不思議な虚無感がなのはの心を包んでいた。
そして、なのはが光彦の家のそばにさしかかると…
みゆう「なのはせんせーい!」
ひとみ「無事でしたか!」
あすか「遅かった…ですね…。」
まゆり「心配していたのですよ。」
何と、カルテットの4人と光彦が外でなのはを出迎えたのだ。
なのは「皆さん…どうして…。」
光彦「いや、僕は中で待っているように言ったんですが…外で待つって聞かないんですよ。」
まゆり&あすか&みゆう&ひとみ「先生、お帰りなさい!」
この瞬間、なのはの心から熱いものがこみ上げ、虚無感を押し流した。そして、
なのは「ただいま!」
なのはは叫ぶように言い、そして涙を流しながらカルテットの4人を抱きしめた。
ひとみ「先生?」
みゆう「どうしたの、先生?」
あすか「うまく…いかなかったのですか…?」
なのは「皆さん、わたしは皆さんのような生徒を持つことができてとても幸せです。とても…。」
まゆり「え、ええ?」
なのは「これからもわたしは頑張ります!」
なのはは立ち直り、新たなる決意に心を燃やした。それは紛れもなくカルテットの4人の優しさがもたらしたものであった。
(松井さん、見ていて下さい。わたしは…やります!)
この様子を見ていた光彦は、カルテットの優しさのパワーを知った。そして、改めて自分の幸せに思いをはせるのであった。
おわり
※後日、なのははカルテットの4人を伴って、思い出の場所であるなの花橋で記念撮影を行った。それもまたなのはや4人の頑張りの源となるのであった。
童話が元ネタのアニメSSは珍しいと思います。これぞ「オトギストーリー」?