夢追い虫カルテットシリーズ

VOL.18「だからわたしは嫌われる?」

あすか「い…いや…。」

その瞬間、あすかは目を覚ました。そして、自分についての悲しさや辛さで胸がいっぱいになり、深夜だというのも忘れて光彦にすがりついた。
あすかにすがりつかれたことによって光彦は目が覚めた。

光彦「わっ…って何だあすかか。どうしたのこんな夜中に。」
あすか「ご主人様…わたしのこと…嫌いですか…?」

突然の質問に光彦は面食らった。

光彦「何でそんなこと聞くのさ。好きに決まってるじゃないか。」
あすか「だって…みんな…わたしが…いなくなれば…いいって…。」

あすかはポロポロと涙をこぼしていた。

光彦「ああ殺虫剤のことか。」
あすか「わたしの…どこが…いけないの…ですか…。何も…悪いこと…して…ないのに…ふええ…えっえっ。」
光彦「あすか、僕もゴキブリは悪いことはしていないと思うよ。」

光彦の声を聞き、あすかは泣きやんだ。

あすか「えっ?」
光彦「まあ確かにゴキブリにはばい菌が多いとか言われているし、害虫であることは事実だよ。でもみんなそんなことは置いといてゴキブリの姿形や行動を嫌っていると僕は思う。そういうのは僕はいけないと思うんだ。カブトムシはかっこいいのにゴキブリは気持ち悪い、なんて言うのは人間の勝手だよ。」
あすか「……………。」
光彦「それに、僕やみんなはあすかのことが好きだよ。あすかがいなくなったら寂しいよ。あすかは優しいいい子だしね。」

そこまで言い終わった光彦があすかの方を見やると、あすかは再び泣きだしていた。
あすかはうれしかったのである。自分のことを受けとめてくれる人がそばにいてくれたことが。

あすか「ご主人様…ありがとう…ございます…ありがとう…。」
光彦「元気になったかい?」
あすか「…はい。」
光彦「それは良かった。僕もうれしいよ。」

そしてその晩は、あすかは光彦と一緒に眠り、心を癒したのであった。

それから数日後。光彦は台所でゴキブリを見た。
虫が本当に好きな光彦は、ゴキブリに対しても平等な意識を持つので、さほど驚くことはしなかった。
だが、そのゴキブリがあすかに吸い寄せられる様子には驚いた。

光彦「あすか、これは一体どういうことだい?」
あすか「ごはんを…あげて…いるんです…。そうすれば…食べ物を…盗む…必要が…なくなるから…。」

あすかとゴキブリは、本当に心を通い合わせているようであった。その様子やあすかの優しい笑顔を見て光彦は胸がきゅんとなった。そして、

(地上で生きる者はやはり心を通い合わせなくてはいけないのだな…。)

という思いを強くするのであった。

おわり


あすか初メイン。これで四人全てがメインを張ることとなりました。
「なぜ人はゴキブリが嫌いになるのか」、結構深いテーマだと思います。
しかしH元も考えた殺虫剤を開発しますね…。


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