四人が着いた頃、教会では、いよいよ式の山場である純白のウエディングドレスを着たみゆうとタキシードを着た饗介との誓いのキスが行われようとしていた。
(いけない!)
そう思った四人は、バージンロードの入り口のドアを蹴破った。
ひとみ「その結婚待ったあ!」
神父「な、何ですかあなた達は?」
まゆり「みゆう、お願いだから結婚をやめてみんなで帰りましょう。」
だがみゆうの返事はつれないものであった。
みゆう「いやです。もうあたしはきょうちゃんのお嫁さんになるんです。そして二人で幸せになるんです。」
あすか「そんな…。」
ひとみ「みゆちゃん、目をさまして下さい!」
まゆり「ご主人様、何とか言ってやって下さい。」
だが、光彦には自信がなかった。それというのも、これほどまじめに話すみゆうを見たことがなかったからであった。
それに、恩着せがましい態度を取るのもいやであった。
そこで、少しあきらめた内容のことを話し始めた。
光彦「みゆう、どうしても結婚したいようだね。僕はこんなに真剣なみゆうは見たことがない。ということは僕に
何かが足りなかったのかも知れない。だからみゆうは自分の幸せを追求してくれ。
みゆうが幸せなら僕はそれでいいんだ。」
そこまで言うと、光彦は、優しさとあきらめが混ざったような不思議なほほえみを浮かべた。
このとき、光彦は、みゆうが帰ってこないことを覚悟していた。
だが、このほほえみはみゆうの心に確実に何かをもたらしていた。
(何だろう…忘れていた何かを思い出すような…。)
その時、みゆうの心にある情景が浮かんだ。
それは、遠いあの日、自分の血を吸わせてくれた時の光彦のほほえみであった。あの日の不思議なほほえみは、今日のほほえみとあい通ずるものがあった。
そのことに気づいたみゆうの心から何か熱いものがこみ上げ、と同時に涙もこぼれてきた。
みゆう「う…う…、ご主人様!」
次の瞬間、みゆうは光彦達のもとに駆け出していた。
そして、光彦に抱きついたのであった。
みゆう「ご主人様…あたし…あたし…。」
光彦「よく帰ってきてくれたね。ありがとう、ありがとう。」
ここで、二人の、いわば再会にひとみ、あすか、まゆりも加わってきた。
ひとみ「みゆちゃんが…帰ってきた…。」
あすか「よかった…。」
まゆり「これでもと通りですわ。」
カルテットの四人、そして光彦は涙ぐんでいた。そして五人でみゆうの帰還を喜び合った。
そのキラキラした様子を見ていた饗介はふと寂しい気持ちに襲われた。そして五人に向かって敗北宣言をした。
饗介「分かったよ。今回は俺の負けだよ。」
そして、呆然としている神父に手をかざし、今回のことを忘れるように術をかけた。
帰り際、饗介は五人に向かってこう呟いた。
饗介「お前らは本当にすごいよ。うらやましいよ。あ、それからドレスは返してもらうぞ。」
饗介はテレポーテーションでみゆうのドレスを奪って、みゆうを下着姿にしてから去って行った。
みゆう「きゃっ!」
光彦「あ…あ…。」
ひとみ「とりあえず服を!」
みゆうはあわてて控え室に服を着に行ったのであった。
教会からの帰り道。
みゆう「みんなとお別れにならなくて、本当に良かった!」
光彦「それは僕も同じだよ。やっぱ四人いなくちゃ寂しいもんね。」
みゆう「それにしても、ドレスくらい置いてってくれれば良かったのに。」
ひとみ「どうしてですか?」
みゆう「だって、そうすればすぐご主人様のお嫁さんになることができるもん!」
そのみゆうの発言に、ひとみ、あすか、まゆりの三人はむっとした。
まゆり「今の発言は聞き捨てなりませんね。」
あすか「みゆちゃんだけの…ご主人様じゃ…ありません…。」
ひとみ「あたしもご主人様のお嫁さんになりたいです!」
あすか「…わたしも…。」
まゆり「わたくしもですわ。」
光彦「あ、みんなありがとう。」
こんなかわいくて性格も良い少女達と毎日を過ごせることに幸せを感じる光彦であった。
そして彼女達の言い争いに奇妙な満足感を感じたりもするのであった。
おわり
ウエディングドレスや「お嫁さん」という言葉の響きには、素敵でかつ萌える要素があるのではないでしょうか?
それにしても、ウエディングドレス姿は凶悪だ…。