光彦「やあみんなお帰り。」
ひとみ「ただいま。」
あすか「…ただいま。」
まゆり「ただいま帰りました。」
ひとみ、あすか、まゆりの三人はいつものように光彦に挨拶をした。しかし、みゆうだけはなぜか無言であった。
ひとみ「みゆちゃん、どうしたんですか?」
あすか「あいさつ…忘れてますよ…。」
まゆり「いつもだったら元気にやるのに…。」
三人と光彦がいぶかしがっていると、みゆうの口から思わぬ言葉がもれた。
みゆう「みんな、あたしこの家から出て行きます。」
その言葉に、場の全員が仰天した。
光彦「な、何で?」
みゆう「あたし、饗介さんのお嫁さんになりに行きたいんです。」
まゆり「あ、あんなやつと?」
みゆう「あんなやつ、って言わないで下さい。とにかく決めたんです。」
あすか「本気…ですか…?」
みゆう「本気です。それでは皆さんお世話になりました。」
ひとみ「ま、待って下さい!」
こうしてみゆうは去って行った。
残された四人は、何が何だかさっぱり分からなかった。
光彦「一体全体どうしてだ!」
ひとみ「みゆちゃん…。」
だが、考えているうちに、あるひとつのことが浮かび上がってきた。
あすか「みゆちゃんの目…光が感じられませんでした…。」
ひとみ「じゃあ、操られている、ってこと?」
まゆり「でないとあんなやつと結婚しようという気が起きた理由が説明できませんわ!」
光彦「でも、これからどうしようか…。」
まゆり&あすか&ひとみ「うーん…。」
そのころ、みゆうと饗介は公園にいた。
みゆう「やっと会えましたね、饗介さん。」
饗介「きょうちゃん、でいいよ。俺もみゆちゃん、って呼ぶから。」
みゆう「きょうちゃん…。」
饗介「みゆちゃん…。」
二人は抱き合った。
そのころ、残された四人は、今後のことについて話し合っていた。
光彦「状況から考えて、あいつは形から入ると思うんだ。」
ひとみ「と言いますと?」
光彦「何よりもまず結婚式をあげることを優先させると思う。だから、教会や式場や貸し衣装屋を重点的に
あたってみよう。」
あすか「…なるほど。」
まゆり「なんとしても結婚式だけは阻止しなくては…。」
こうして、四人による聞き込み調査が始まった。
だが、それらしい情報はなかなか見つからない。
(もうだめか…。)
そんなあきらめの気持ちが蔓延し始めた頃に訪れた貸し衣装屋で、ようやくそれらしい情報を得た。
店員「…ええ、若いカップルでした。それがすごく変なんですよ。」
光彦「と言いますと?」
店員「私は衣装室に行って、衣装を探すのをお手伝いしていたのですが、不意に男の方が手をかざしたか
と思うと、二人ともいなくなっていたんです。それで調べてみると、ウエディングドレスとタキシードが
一着ずつ消えていたんです。」
まゆり「間違いありませんわ!」
光彦「それで、式の日取りなどについて聞いていませんか?」
店員「三日後…あ、つまり今日ですね、の午後に幸福教会で式をあげるんだ、と聞きましたが…。」
ひとみ「すぐではないですか!」
あすか「止めに行かなくては。」
光彦「ありがとうございました!」
さっそく四人は、幸福教会に向かった。