Happy Angle Paradise!

第10話「一杯のラーメン」

そして、様々な工程を経て、二人のラーメンが完成した。
亮が作り上げたのは、もちろん父親の味を忠実に再現した醤油ラーメン。
そして、ましろが作り上げたのは、透き通るようなスープの塩バターラーメンだった。
審査は一般人代表という事で、真吾が選ばれた。

真吾「じゃ、まずは亮のから・・・」

ズズ・・・ズルルッ・・・
スープを1口飲み、その後に麺をすする。

真吾「・・・うん、うまい。前のとは断然違う。龍雄さんの味に近くなってるな」
亮「いよっし!」

真吾の感想を聞いた瞬間、亮は右腕でガッツポーズをした。

ましろ「勝利を確信するのは・・・私のを・・・食べてからです・・・」
真吾「ああ、そうやな・・・じゃ、今度はましろのを・・・」

ズズ・・・ズルルッ・・・
スープを1口飲み、その後に麺をすする。

真吾「・・・・・・・」

真吾の表情が変わった。
暫くの間を置いた後、真吾はようやく口を開く。

真吾「・・・・うまい!」

やがて、両方を完食した真吾の判定が出た。

真吾「ましろの勝ちや!」

ましろはペコリと頭を下げた。

亮「認めねぇ・・・俺は認めねえぞ!」

この判定に亮が食い下がった。

亮「ましろ!あんたに言われたとおり、俺の出した味は親父の味を再現した!日々研究したからその出来は完璧のはずだ!」
ましろ「・・・はい」

亮の言葉に、ましろはこくりと頷く。

亮「なのに、この俺の一杯がそんなのに負けるはずがねえ!」
真吾「うぐっ!?」

亮が言葉と同時に、真吾の襟首を掴んだ!

亮「さてはてめえ・・・はなっからコイツを選ぼうとしてたな!」
真吾「ち、違う・・・オレはちゃんと公平な審査を・・・」
亮「しらばっくれんな!」
りな「はい、そこまで!」

ガッ!

亮「ぐわあっ!」

亮が腕に更なる力を入れようとした瞬間、りなが片手で軽々と亮の腕を掴み、締め上げていた。

亮(な、何なんだ!?この女・・・)
ましろ「亮さん・・・確かに・・・あなたの一杯は・・・完璧でした・・・」

苦しむ亮に向けて、ましろは話を始めた。

ましろ「しかし・・・まだ1つ・・・足りないものが・・・あるのです・・・」
亮「た、足りないもの?」

亮が理由もわからず、表情を曇らす中、ましろは口を開いた。

ましろ「・・・味に・・・かけてきた・・・年月です・・・」
亮「年月・・・?」
ましろ「あなたのスープは・・・まだ・・・龍雄さんのように・・・年月をかけていません・・・ですから・・・まだ磨きのかかっていない・・・原石のような・・・スープなのです・・・」
龍雄「だからお前のラーメンは、手間をかけて作り上げた、ましろちゃんのラーメンに負けたんだ」
亮「・・・・・」

表情を曇らせる亮に、ましろはそっと声をかける。

ましろ「あなたなら・・・できます・・・ここまで・・・龍雄さんの味に・・・近づけたのですから・・・あなたの原石を・・・磨いて・・・おいしい一杯を・・・作り出してください・・・」

そう言って、ましろはニコッと微笑んだ。

亮「・・・・・・親父」

数分の間を置いた後、亮がようやく口を開いた。

龍雄「何だ?」
亮「今からでも・・・遅くねえかな?俺・・・この店・・・やってけるのかな?」
龍雄「ああ、その気合と根性を忘れなけりゃ・・・遅くねえさ」

龍雄は亮の肩をポンと叩いた。
こうして亮は心を入れ替え、店のために最高のラーメンを作る決意をした・・・


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