真吾「じゃ、まずは亮のから・・・」
ズズ・・・ズルルッ・・・
スープを1口飲み、その後に麺をすする。
真吾「・・・うん、うまい。前のとは断然違う。龍雄さんの味に近くなってるな」
亮「いよっし!」
真吾の感想を聞いた瞬間、亮は右腕でガッツポーズをした。
ましろ「勝利を確信するのは・・・私のを・・・食べてからです・・・」
真吾「ああ、そうやな・・・じゃ、今度はましろのを・・・」
ズズ・・・ズルルッ・・・
スープを1口飲み、その後に麺をすする。
真吾「・・・・・・・」
真吾の表情が変わった。
暫くの間を置いた後、真吾はようやく口を開く。
真吾「・・・・うまい!」
やがて、両方を完食した真吾の判定が出た。
真吾「ましろの勝ちや!」
ましろはペコリと頭を下げた。
亮「認めねぇ・・・俺は認めねえぞ!」
この判定に亮が食い下がった。
亮「ましろ!あんたに言われたとおり、俺の出した味は親父の味を再現した!日々研究したからその出来は完璧のはずだ!」
ましろ「・・・はい」
亮の言葉に、ましろはこくりと頷く。
亮「なのに、この俺の一杯がそんなのに負けるはずがねえ!」
真吾「うぐっ!?」
亮が言葉と同時に、真吾の襟首を掴んだ!
亮「さてはてめえ・・・はなっからコイツを選ぼうとしてたな!」
真吾「ち、違う・・・オレはちゃんと公平な審査を・・・」
亮「しらばっくれんな!」
りな「はい、そこまで!」
ガッ!
亮「ぐわあっ!」
亮が腕に更なる力を入れようとした瞬間、りなが片手で軽々と亮の腕を掴み、締め上げていた。
亮(な、何なんだ!?この女・・・)
ましろ「亮さん・・・確かに・・・あなたの一杯は・・・完璧でした・・・」
苦しむ亮に向けて、ましろは話を始めた。
ましろ「しかし・・・まだ1つ・・・足りないものが・・・あるのです・・・」
亮「た、足りないもの?」
亮が理由もわからず、表情を曇らす中、ましろは口を開いた。
ましろ「・・・味に・・・かけてきた・・・年月です・・・」
亮「年月・・・?」
ましろ「あなたのスープは・・・まだ・・・龍雄さんのように・・・年月をかけていません・・・ですから・・・まだ磨きのかかっていない・・・原石のような・・・スープなのです・・・」
龍雄「だからお前のラーメンは、手間をかけて作り上げた、ましろちゃんのラーメンに負けたんだ」
亮「・・・・・」
表情を曇らせる亮に、ましろはそっと声をかける。
ましろ「あなたなら・・・できます・・・ここまで・・・龍雄さんの味に・・・近づけたのですから・・・あなたの原石を・・・磨いて・・・おいしい一杯を・・・作り出してください・・・」
そう言って、ましろはニコッと微笑んだ。
亮「・・・・・・親父」
数分の間を置いた後、亮がようやく口を開いた。
龍雄「何だ?」
亮「今からでも・・・遅くねえかな?俺・・・この店・・・やってけるのかな?」
龍雄「ああ、その気合と根性を忘れなけりゃ・・・遅くねえさ」
龍雄は亮の肩をポンと叩いた。
こうして亮は心を入れ替え、店のために最高のラーメンを作る決意をした・・・