炎はルガールに組み付いていたロックに向かって放たれる。燃えさかる炎に包まれたロックは、それまでの気勢を失い、狼狽した。
「!! ひっ、火だ! 火だぁぁぁ!」
気が動転したロックはルガールから離れ、地べたを転がって炎を消そうともがきはじめた。術者を失った重力場はそのエネルギーを失い、消え去っていく。重力の拘束を解かれたルガールは、立ち上がって笑い始めた。
「フハハハハハ……トラウマというやつか。こいつはいい!」
転げ回ってようやく全身の炎を消し止めたロックだったが、その表情にもはや先ほどまでの闘志は残っていなかった。今あるのは、ただただ、火への恐怖のみ……。
「フフフ……おまえはこれが怖いんでしょう? もっとあげるわ」
グレイはかざした右手から、さらに大きな火炎放射をロックに浴びせた。
「うわぁぁぁ! やめろぉぉぉぉぉっ!」
ロックは抵抗する意志も見せず、逃げまどった。ふと、背中に気配を感じる。いつの間にか、ルガールが背後に回りこみ、ロックを羽交い締めにしていた。ルガールは瞬間テレポートを使い、一瞬にしてロックの背後に移動したのだ。
自由を奪われ、錯乱するロックの目の前に、グレイは立った。
「ねぇ、ルガール……私いいことを思いついたわ」
一瞬の間、沈黙が流れると、ルガールは相棒に向かって不敵な笑みを浮かべた。
「そいつはいい……おもしろい事になりそうだ」
呪詛悪魔グレイは、羽交い締めにされ、動けなくなったロックのあごから頬を、あたかも愛でるように、手でそっと撫でると、ロックの耳元に顔を近づけて、そっとささやいた。
「洗礼よ……ロック」
グレイは顔を離すと、両手を広げ、莫大な量の火炎を発生させる。そして、ロックをその炎で包み込んだ。
「ギャアアアアアアアアアアアア!!」
ロックは叫び、火だるまになった。羽交い締めしていたルガールが拘束を解くと、炎にくるまれたロックは力なく倒れ込んだ。
呪詛悪魔が生み出した地獄の炎は、容赦なくロックを焼いていく……。
守護天使ロックは、ここに敗北した。
呪詛悪魔ルガールは、グレイと共に笑みをこぼす。
「残る障害は……守護天使ティコ! 待っていろよ……貴様には最も辛く、重い刑を執行してやる」
残された希望は、絶望に打ち勝てるのだろうか……。
天界、人間界、呪詛悪魔界を巻き込んだ大いなる戦いは、まだ始まったばかりである。