P.E.T.S.[AS]

第7話「すれ違う心」

 戦闘体勢を解除したルガールが、蔑むように笑う。

「勝負あったな。守護天使ロックよ」
「……がっ、汚ねぇぞ……てめえら……」
「グレイに思考を読まれたことがか? フン、持っている能力は有効に使って当然だ。汚くもなんともない」

 ルガールは、うつぶせに倒れているロックに近づき、服の襟を掴んでロックの顔を引き上げると、自身の顔を近づけた。

「確かに……グレイの助けがなければ、なかなかの接戦になったろう。ハンデなしで戦えなくて俺も残念だよ。だが、あいにく今の我々に遊んでいい時間は無くてな」

 ルガールは右手に力を込めると、闇のエネルギーを集めだし、やがて右手を包む大きな籠手を造り出した。黒光りするそれには、拳の先に鋭利な棘が据え付けられている。

「お別れだ……犬のロックよ」

 ルガールは、籠手をロックの首に打ち据えようとした。そのときだった。

「勝負は……まだわかんねえぞ!!」

 ロックは、両腕をルガールの顔の両脇に回し、両手でルガールのこめかみを押さえると、両手の間に強力な重力場を発生させた。

「ぐぅ!?」

 顔の両脇から迫るエネルギーに、思わず立ち上がるルガール。ロックは両脚をルガールの胴体にからめ、しがみつくと、両手の間に発生させた力場を、二人の体を包むほどの大きさに急拡大させた。ロックの全エネルギーを込めた、特大級の重力場だ。
 ルガールは急激に襲い来るエネルギーに顔をしかめながらも、余裕の言葉を口にした。

「自爆技か……そいつは困るな」
「てめえらに美月は手出しさせねえ! ここで俺と死んでもらうぜ!」

 重力場のエネルギーが最高潮に達する。ルガールは自重を支えきれずに、片膝を付いた。組み付いていたロックも、全身に掛かる重力に体中が悲鳴を上げていたが、必死に体を動かし、ルガールの背中に回り込んだ。ロック自身の体重も使って、ルガールを押し潰そうという腹だ。
 ルガールは、体を支えきれず、ついに四つん這いになった。途方もない重力の力が、この強敵をいよいよ押し潰そうとしていた。
 しかし……。

「グゥゥゥゥ……グレイ!」

 ルガールの呼びかけに、呪詛悪魔グレイが動いた。グレイは二人の傍らに移動すると、片手に力を込め、燃えさかる紅蓮の炎をその手に発生させた。


Otogi Story Index - シリーズ小説 - P.E.T.S.[AS]