P.E.T.S.[AS]

第7話「すれ違う心」

「ちっくしょう!」

 守護天使ロックは荒れていた。彼はあの後、「よいさ」には戻らず、夜の街をぶらぶらと歩き回っていた。

「俺はもう、必要ないってのかよ……美月……」

 主人に、見捨てられた……というわけではないだろう。だが、あの光景をみてロックは思い知った。美月が密かにティコを好いていたこと。それが本当だというなら、それが美月の幸せになるなら……守護天使の自分はそれを尊重しなければならない。そして、自分はいつか……必要とされなくなるだろうと……二人の邪魔でしかなくなるだろうと……彼は覚悟していた。だったら、自分から去るしかない。
 と、同時に、腹も立っていた。守護天使と主人の恋愛は、本来御法度だ。守護天使なら、それをわきまえなければならない。他の守護天使を導く立場にある一級守護天使ならば、なおさらだ。それをやすやすと破った相棒のティコに、腹が立っていた。
 ロックは、誰よりもティコを信用していた。天界で共に修行し、苦楽を共にしてきた。どんな奴かは分かっているはずだった。優秀だが、謙虚で、人思いで……誰に対しても誠実で、信用できたティコ……。それが、一人の女性に惹かれただけで、あんなに変わるものなのか……? ロックは怒りをぶつける対象を探して、街を歩き回っていた。

 気がつくと、ロックは街から少し離れた、静かな住宅街に出ていた。時計を見ると、午前3時半。時間だけに、人っ子ひとりいない、寂しい道路の真ん中にロックは居た。
 静かだ……しかし、何かがおかしい。

「なんの気配だ……これは……」

 ロックが異変に気づいた、その時だった。
 道路脇に立っていた電灯の光が急に消え、辺り一体が急速に闇に囲まれていく。その闇が自然なものではなく、何らかの魔力によるものだとロックはすぐに察知した。

「誰だ……お前らは!」


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