P.E.T.S[AS]

第6話「動き出す悪夢」

【思うに、人の本質とは……水(water)のようなものではないでしょうか】

「それは容易く見透かせるという意味ですか? それとも、容易く他の色に染まってしまうと?」

【後者の意味では、確かにそうですね。それどころか、人は染まらなければならないのです。他から影響を受け、学び、自分の色を決定していきます。ですが……】

「色は付けども、水は透明さ(pure)を保たなければならない」

【そうです。悲しいことに、あの二人にとって、あの思い出は濁りをもたらしたようです】

「何色に染めて……汚してしまったんでしょうね。
血の色……あるいは奴らに接触したという点で、黒でしょうか」

【ある程度までなら、人は耐えられます。ですが、透明さを失うにつれ……人は過去を正確に思い出すことが困難になります。濁りで先は見えず、目の前に浮かぶ澱んだ色に怯え……】

「そして記憶を封印する」

【だから、私たちが見透かそうとしているのです。過去を知るために……どういう経緯で、あの悲劇が起きたのか……これから、何が起こりつつあるのか……】

「『彼』と協力して……ですね?」

【『彼』には、私とあなたの力、そして出来うる限りの多くの知識を与えました。彼の能力を使い……それを私が制御して……】

「今、我々は彼女達の過去を垣間見ている……。
ですが『彼』は人としては……力を持ちすぎましたね。私と同じく……」

【それでも、この物語の今後の語り部としては、もっとも適任でしょう?】

「語り部として? ……かもしれません。『彼』はあらゆる場所、時に存在できるのですから……」

【それでは『彼』に任せて、かまいませんね。 ……どうしたの?】

「濁った水は……元に戻せるのでしょうか。再び、透明にする事は……」

【自分で癒すしかありません。自分で結論を出すのです。ですが、それはまだかなわない……。今の彼女たちは、透明になる事をただ望んでいるだけの……】


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