【思うに、人の本質とは……水(water)のようなものではないでしょうか】
「それは容易く見透かせるという意味ですか? それとも、容易く他の色に染まってしまうと?」
【後者の意味では、確かにそうですね。それどころか、人は染まらなければならないのです。他から影響を受け、学び、自分の色を決定していきます。ですが……】
「色は付けども、水は透明さ(pure)を保たなければならない」
【そうです。悲しいことに、あの二人にとって、あの思い出は濁りをもたらしたようです】
「何色に染めて……汚してしまったんでしょうね。
血の色……あるいは奴らに接触したという点で、黒でしょうか」
【ある程度までなら、人は耐えられます。ですが、透明さを失うにつれ……人は過去を正確に思い出すことが困難になります。濁りで先は見えず、目の前に浮かぶ澱んだ色に怯え……】
「そして記憶を封印する」
【だから、私たちが見透かそうとしているのです。過去を知るために……どういう経緯で、あの悲劇が起きたのか……これから、何が起こりつつあるのか……】
「『彼』と協力して……ですね?」
【『彼』には、私とあなたの力、そして出来うる限りの多くの知識を与えました。彼の能力を使い……それを私が制御して……】
「今、我々は彼女達の過去を垣間見ている……。
ですが『彼』は人としては……力を持ちすぎましたね。私と同じく……」
【それでも、この物語の今後の語り部としては、もっとも適任でしょう?】
「語り部として? ……かもしれません。『彼』はあらゆる場所、時に存在できるのですから……」
【それでは『彼』に任せて、かまいませんね。 ……どうしたの?】
「濁った水は……元に戻せるのでしょうか。再び、透明にする事は……」
【自分で癒すしかありません。自分で結論を出すのです。ですが、それはまだかなわない……。今の彼女たちは、透明になる事をただ望んでいるだけの……】