世界は広い。自分がそれまで認識していた範囲がどれだけ狭かったか、あなた方には想像がつくだろうか。
その昔、私は他の誰よりもいくらかは賢いつもりだった。他の誰よりもいくらかは愛情深い人間だと思っていたし、また……他の誰よりも自分を慕ってくれる人も身近に居た。
全てに満足し、これが世界の全てだと思っていた。ずっとこの幸せが続けばと……。
だが、幸せの破綻は一瞬にして起こってしまった。
あっという間の出来事だったのだ。愛しき人を失い……また私も無事では済まなかった。私はあの闇の存在に殺害され、魂だけがこの世を離れた……。
奴らは、私を取るに足らない人間だと思っていたようだ。だが今となっては、それは致命的な誤りだ。私を殺し、そして彼女を最悪の運命に陥れた奴らを……許すわけにはいかない。
私は、ある者達と協力する事にした。私の魂を救ってくれた者達だ。彼女たちは消滅しかかっていた私を蘇らせ、力と知識を与えてくれた。そして事の顛末を知った私は、怒りに震えた。
全ては計画されていたのだ。奴らが力を欲する……その為だけに……。
今回、私は彼女たちに新たな任務を与えられた。そう、これからこの物語をあなた方に語る、語り部としての役割だ。
私はこれからの出来事を、運命に翻弄された者達の想いを、全身全霊を持ってあなた方に伝えよう。
守護天使ティコの存在を通して……。またはあらゆる時や場所に存在できる、私本来の立場として……。
あらゆる絶望に唯一立ち向かえる時間(とき)……それは今、現在である。