P.E.T.S[AS]

第5話「温泉旅行」

【そろそろ……限界が近づいているのかもしれません】

「多少の混乱は仕方ないでしょう。彼女には、どうしても思い出してもらわなければ」

【いずれ、彼女は辛い思い出にぶつかります。きっと、それを無意識に感じ取っているのです】

「誰もが持っている、忌まわしき記憶ですね?」

【特に、彼女は酷いものでした。そしてその思い出は、私たちの……】

「間に合うのでしょうか。修正するには……」

【ここまで来た以上、私たちに引き返す道は残されていません】

「そして、『彼女』を救わなければ……」

【どうやらあなたは、『そちらの方』が優先の様ですね】

「それが私の義務であるような気がします。あるいは……罪滅ぼし」

【わたくしにとっても同じなのです。今までに犯した罪を、償わなければなりません】

「罪ではないでしょう。少なくとも、あなたは最善を尽くしたはず」

【無力に等しかった、わたくしがですか?】

「……………」

【そう、守りたい物を守れなかった後悔。それはたとえ誰であろうと、耐え難い記憶として……残るのです】

「……『彼女』が、目覚めつつあります」

【もう一人の追想が、始まるのですね】

「今は見守りましょう。『彼女達』の夢を……」


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