真純「あらぁ? どうしたの美月。今日はもう……ああ〜〜〜! かっすみちゃんじゃな〜い☆ いらっしゃ〜い☆ 入って入ってぇ〜☆」
工房のスチールドアを開けると、真純先生が居た。工房でいつも着ている作業服姿ではなく、今朝と同じ紺のセーターの普段着だ。
私「この子に天使のクラフトを見せてあげたくて」
かすみ「あ、あの……こんにちは……」
真純「オッケーオッケー☆ いくらでも見せたげる☆」
かすみちゃんは工房に入ると、辺りに散乱しているモールド模型や塗料の缶などを、不思議そうに眺めていた。そしてさっきまで涙で一杯に濡れていた彼女の目が天使のクラフトが飾られている戸棚に移ると、大きく息を飲み込み両手で口を押さえた。
かすみ「す……ごい……」
真純「気に入ってもらえたかしら?」
先生がさっきの表情からは一変して、芸術家としての自信をのぞかせる笑みを浮かべた。両腕を組んで、言葉を失っている少女の後ろ姿をじっと見つめている。
かすみ「誰が作ったんですか?」
真純「ずでっ!!」
吹き出しそうになるのを、私は必死で堪えた。
真純「私よ。かすみちゃん。わ・た・し☆」
人差し指を自分の顔に向けて、先生の声はデフォルト?の可愛いコ大好き女に戻っている。
かすみ「ええ!?」
心底驚いた、という感じで、振り向いたかすみちゃんはその小さな口を半開きにしている。
私「真純先生はね。天使のクラフトを作ってるクラフト作家なの。そして、私はその助手」
自己紹介も兼ねて、私は驚きのあまりその場に棒立ちしている少女に説明した。