P.E.T.S[AS]

第3話「麗しの巨匠」

工房には、天窓から柔らかな日光がさしこんでいた。
コンクリート製の床には白い粉がところどころに散乱している。鼻につく空気中にただよう溶剤の匂い。
奥の方にある作業用テーブルには削りかけのオブジェや粘土製の型が置いてある。
そして右手の戸棚から、こちらを見つめている……天使達。

ティコ「何度見ても、本当に素晴らしいですね」

隣に立っていたティコが息を飲む。

ロック「先生、天使ばっか作ってるよな」

ポーセレンと呼ばれる磁器でできた天使たちは、白い衣服にその身を包み、手には綺麗な花束を持っている。
背中には白く大きな羽。皆穏やかな笑みを浮かべていた。

先生は今業界でセンセーショナルな人気を誇るクラフト作家だ。中でも天使を象った作品には世界でも高い評価を受けている。そんな先生のもとで、私はアシスタントの仕事をしているのだ。

ティコ「先生はまだいらっしゃらないみたいですね」
私「みたいだね」

いつもなら私がくる頃には、先生はすでに作業服に着替えて、ここでコーヒーをすすりながら前日に描いたスケッチとにらめっこをしているはずなのだが。

すると突然、後ろから大きな声が私の耳をつんざいた。

「キャー!ティコ君にロック君!来てくれたのね嬉し〜☆」
 
……
き、来たぁ……。


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