お兄ちゃんの部屋は広く、そして薄暗かった。
私の目の前に洋風の机が見えた。上にはいくつかのノートと年代物の地球儀が乗っかっている。右をみると部屋の奥の方にまるで王宮貴族が使うようなカーテンに囲まれた豪勢なベッドがあった。
閉められた窓のカーテンの隙間から、わずかだが光が差し込んでいる。この部屋に存在する明かりといえば、その光くらいだった。
「明かりをつけるか」
お兄ちゃんは私に目を向けると、確認を取るように言った。この人は普段、明かりをつけないのだろうか。
明かりがつけられ、光があたりに充満するとこの部屋の広さに改めて驚嘆する。家具の少なさが、その印象をさらに強めているのだろう。あるのはせいぜい机とベッド、そして綺麗な絨毯の床においてある、小さなソファー。そして机の横の本棚。
ほとんどの物は、ベッドの側のクローゼットに収納されているのだろう。お兄ちゃんの部屋はとても整然として寂しいくらいだった。
「好きにくつろいでいい」
くつろげと言われても、どうしろというのか。相変わらずぶしつけで怖そうなこのお兄ちゃんと一緒では、とてもリラックスなどできたものではない。
途方に暮れてしばらく立ちつくしていると、視界のすみっこの方で何かが動いた。