「ご主人様?」
ん……?
ぼやけた天井が見える。
どこだろう、ここは……。
また別の世界にでも迷い込んだんだろうか。
だんだん意識と視界がはっきりしていくと……。
「あ……」
「医務室ですよ。ここは」
……ティコの姿があった。
私「……」
ティコ「今ロックが何か冷たい飲み物を買ってきてますから。気分はどうですか?」
急に場面が切り替わってなんだか現実感がない……まるで永い眠りから覚めたようだ。
ただ、恐怖のあまり失神してたことだけは、なんとか覚えている。
5連続渦回転どころか最初の宙返りを迎える前に、私の意識は崩壊したらしい。
二人は大変だったろうな……。
なかなかティコの顔を見ることができなかった。
私「ごめんね。ジェットコースターに乗るなんてできもしないこと言って。気絶しちゃうなんて、カッコ悪いよね」
主人の面目がつかない。でもティコは優しい微笑みを全く崩さなかった。
ティコ「お気になさらずに。私たちは守護天使、どんな時もご主人様をお守りします」
どんな時も……ね。
思わず二人で苦笑した。
そこへ、ロックが走ってやってきた。手には三人分の缶ジュース。
ロック「うおぉぉぉい。買ってきたぞ~。あ、美月、気が付いた?」
人なつっこく笑って、ロックは缶ジュースを私に渡してくれた。
私「うん。ごめんね。迷惑かけて」
ロック「いや全然、悪いのは美月の危険を察知できなかった俺たちだって。俺が30%悪くて、こいつが70%」
ティコ「なんで私の方がパーセンテージが高いんですか」
軽く突っ込むティコ。ふたりのいつものやりとりだ。
私「そうそう、これみーんな先生のせいなんだよ」
今朝のうらみを込めて必殺、責任転嫁。うん、そうしてしまおう。
ロック「明日、仕事だよな?」
私「うん。抗議してやる」
三人で大笑いした。
……
私「もう、時間ないかな」
ティコ「あと少しなら……」
私「観覧車乗らない?」
ティコ「はい!」
ロック「おう!」
観覧車の中で見る夕焼けは最高に綺麗だった。