きよく!ただしく!!

呪詛悪魔編 第十一話「出陣!きよをとりもどせ!!」

恵「それって・・・・」

恵が見つめる中千田が布を取ると、黒光りする古い木刀が顔を出した。
それは子供のころから千田が剣の修行の時に
肌身はなさず持っていた木刀であった。
剣の道を捨てた後でも、
小さいころの思い出の品であるこの木刀だけは捨てることが出来ず
引越しの際にそっと忍ばせて持ってきていたのだった。
千田は木刀を握って立ち上がり、恵のほうを向いた。

千田「きよちゃんを・・迎えに行って来るよ。」

そういって千田は玄関に向かおうとした。
後ろから恵がついてきて言った。
恵「あたしも連れてって!!」
千田は振り向き、いつもの笑顔を見せていった。

千田「恵ちゃんは、ここで待ってて。危険だから・・・」
恵「そんな・・・あたしだって心配なんだから!!!」

恵は目に涙を浮かべている。
記憶にないとはいえ、自分のせいできよが出て行ったことを
恵はうすうす感じていたのだ。

恵「お願い千田君。絶対迷惑かけないから、だから、だから!!」

次の瞬間、千田が恵の体を引き寄せ強く抱きしめた。
突然のことで戸惑う恵。

恵「せ・・・・千田・・・君・・・・」

千田はできる限りの優しい声で語りかける。

千田「約束する。絶対きよちゃんと二人で帰ってくるから・・
   恵ちゃんには、笑顔で迎えて欲しいんだ。だから・・・・」

恵の体から力がだんだん抜けていった。

恵「・・・・絶対・・だから・・・・ね。」
千田「うん・・・」

一言そう答えると、千田は向き直り、ドアを開け出て行った。
・・・ガチャン!!乾いた扉のしまる戸が部屋に響いた。

恵「千田君・・・・無事に帰ってきて・・・・・」

恵はその場に座り込み、祈るように言った。

 

 

闇の大坂の町。

木刀を右手に持ち、神社へと向かう千田。
彼は今何の迷いもなく木刀を握っている。
父の言った『人を救う剣』。
その意味が今の彼にははっきりとわかったのだ。
しばらく歩き、空き地の横の道を進んでいた時
闇の中から聞いたことのある声がした。

\\\「やっぱり、行かれるんですね。」

声のするほうをむく千田。
すると闇の中からネクタイをしめた好青年が現れた。

千田「よしき・・・・」

守護天使・イノシシのよしきである。

よしき「本来であれば、僕はあなたを止めなければならないんですね。」

千田をまっすぐに見つめ、よしきは言った。

よしき「ご主人様が危険な場所へ行こうとしているのですから
    守護天使として、僕にはご主人様を止める義務があるんですね。
    それに・・・・」

よしきの握りこぶしに力がこもる。

よしき「きよさんは・・ご主人様に対し疑いの心を持ってしまったんですね。
    それは・・・守護天使失格を意味するんですね。」

明らかにそれは本心ではなかった。
千田は優しく言った。

千田「守護天使だって心がある。
   心がある者、誰だって失敗はしてしまうものさ。
   そんなときは、回りにいる僕等がフォローすればいい。
   主と守護天使、お互い助け合っていけばいいんだよ。
   よしきだって、本当はわかってるんだろ?」

よしきは黙って千田の言葉を聞いている。

千田「それにねよしき、僕は守護天使を救いに行くんじゃないんだ。」
よしき「え?」
千田「僕はね・・・妹を救いに行くんだ・・・」

千田は微笑みながらそういった。
よしきはその微笑を見ながら数ヶ月前の出来事を思い出していた。

数ヶ月前、きよの降臨が決まった日。

 

 

きよは目に涙を浮かべてよしきの所に来た。

きよ(回想)「よしきぃ〜!!やった、やったでぇ!!!
       うち、ご主人様のとこに行けんねん!!!」
よしき(回想)「おめでとうございます、きよさん。よかったですね。」
きよ(回想)「会えんねん・・またご主人様に会えんねん!!
       うち、メッチャ・・メッチャ嬉しいねん!!!」

目から大粒の涙をこぼしながら喜んでいたきよ。
その日きよはめいどの世界中を走りまわって喜んだ。

 

 

 

よしき「フッ・・・・」
千田「どうした?よしき。」
よしき「いえ・・・なんだか、きよさんが羨ましいですね。
    ここまで愛されてるなんて・・」
千田「どの主人も守護天使への愛は凄まじいものだよ。
   よしきのことだって・・・」
よしき「ありがとうございます・・・・!!」

と、急に千田の体を引き寄せ
しっかりつかむとよしきは空高くジャンプした。

千田「わっ!!!」

と、次の瞬間二人の足の下を大きな灰色の塊が猛スピードで通り過ぎた。
着地した二人はその通りすぎたものの方を向いた。


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