何もない闇の中に一人の少年が浮いていた。元樹である。
恵「元樹・・・君・・」
驚きの色を隠せない恵。
千田は意外なほど落ち着いている。
千田「君が・・呪詛悪魔だったんだね。そして妃皇子さんも・・」
元樹『そのとおりだよ。よくわかったね、誉めてあげるよ。』
冷たい微笑を浮かべている元樹。
恵「そんな、あんな優しそうだったのに・・・・」
元樹『人間は口ではなんとでも言うがやはり外見で何でも判断する。
もしかしたらこのまま気付かれないんじゃないかとまで思ったよ。
ホント、単純な生き物だね。』
千田「きよちゃんはどこだ?」
元樹『きよちゃんは僕と一緒にいるよ。
すごくショック受けてる、そりゃそうだよね。
あんな光景目の当たりにしちゃったんだから・・・』
元樹の顔はとても楽しそうだ。
元樹『所詮人間とはそういう生き物だ。
強欲で自己中心的なエゴの塊だよ。
きよちゃんもやっとそのことに気付いたんだ。』
と、急に元樹の顔から笑みが消えた。
元樹『今宵、守護天使・きよは生まれ変わる。
朝日が昇るとともに、僕たちの仲間になるんだ。』
恵「仲間って・・・まさか!!!」
元樹『主に対し疑いの心を持ったきよはもう守護天使ではいられない。
だからいっそのこと僕たちと同じように
呪詛悪魔になってもらうんだよ。
そのほうが彼女のためだ。』
千田「ふざけるな!!!」
千田が元樹をにらみ返す。
千田「きよちゃんを呪詛悪魔になんかさせやしない。
きよちゃんは・・・きよちゃんは僕の妹だ!!!!
答えろ・・・きよちゃんは今どこにいる!!!」
元樹『妹?フフフ・・・アハハハハハハハ・・・・』
元樹の笑い声が闇に響いた。
元樹『血のつながりもない、ましてや人間ではない元畜生である者が
妹だと?笑わせるな!!』
今度は元樹が千田をにらみ返した。
元樹『・・いいだろう、最後にチャンスをあげるよ。
きよの悪魔への転生は明日の夜明けとともに神社でとりおこなう。
夜明けまでに神社にたどり着けたらきよを解放しよう。
人間の力、とくと見せてもらうよ・・・・』
そういうと元樹の姿は闇の中に溶けていった。
呆然と闇を見詰める千田と恵。
と、急に千田は奥の部屋に行き、押入れを探り出した。
そして中からほこりをかぶり紫色の布に包まれた
細長いものを取り出した。