千田「こいつは・・・・」
千田の前によしきが手を広げて立った。
よしき「呪詛悪魔・金剛ですね。」
灰色の死人のような体に汚れたタンクトップ。
禍々しい形相でこっちをにらんでいる金剛。
一瞬、千田の背中に冷たい汗が一筋流れた。
と、よしきが背を向けたまま言った。
よしき「ご主人様、ここは僕に任せて欲しいんですね。
ご主人様は早くきよさんのところへ。」
千田「よしき!!」
よしき「僕は大丈夫なんですね。さぁ、急ぐんですね!!」
千田「あ、あぁ・・・・」
走り去ろうとして、千田は立ち止まり叫んだ。
千田「よしき!!これは主としての命令だ!!!絶対死ぬな!!!
きよちゃんが僕の妹であるのと同じように・・・・
お前は僕にとっては・・双子の弟だ!!!」
そういうと千田は全速力で走り出した。
その足音を聞きながら、よしきはつぶやいた。
よしき「・・最高の誉め言葉なんですね、ご主人様。」
金剛「貴様一人で俺の相手をするつもりか?」
どすの効いた低い声が闇の中にこだました。
よしき「こないだ逃げ出した男が、偉そうですね。」
金剛「この前は兄者に退くように言われ仕方なく退いたのだ!!
しかし今宵の俺は一味も二味も違うぞ!!!」
大きな握りこぶしを振り上げ、金剛が叫んだ。
よしきは対照的にとても冷静な声で言った。
よしき「では僕も言わせてもらうんですね。
僕たち守護天使にとってご主人様の命令は絶対なんですね。
だから僕も・・・・」
徐にメガネをはずし、金剛を凝視した。
よしき「絶対・・・負けるわけにはいかないんですね。」
その顔からはいつもの優しい微笑みは消えていた。
木枯らしの吹く冬の大坂。
今、かつてない戦いの火蓋が切って落とされた。
つづく