千田の部屋。
あたりは徐々に暗くなりつつある。
野菜を切りながら時計を気にする千田。
きよちゃんが出かけて30分以上がたった。
千田「ちょっと遅いなぁ。探しにいこっか・・・・」
包丁を置いて奥に行って、ジャンパーに袖を通したとき
玄関のドアが開く音がした。
千田「おかえり。今探しに行こうと思ってたんだよ、きよちゃ・・」
出て行くと、そこには恵が立っていた。
千田「恵ちゃん、どうしたの?またご飯食べに来たの?」
恵に近づく千田。
と次の瞬間、恵が顔をあげ、それを見た千田は固まった。
恵の目から光が消えていた。まるで死人のように・・・
その目はあの雨の日にあった男達と同じだった。
千田「恵・・・ちゃん?」
千田の呼びかけにも答えず、ただただ千田を見つめる恵。
そしてゆっくりと千田に向かって足を進め始めた。
一歩一歩千田に近づく恵。
なすすべなく後退する千田。
と、千田は壁にぶつかりもう後退できなくなった。
恵はなおも歩み寄ってくる。
千田「恵・・・・ちゃん・・・」
と、急に恵が千田の肩に腕を回してきた。
その腕には、計り知れない力がかかっていた。
引き離そうとしても、強い力で離れることができない。
千田「何を・・・・!!」
千田が言おうとした瞬間、恵の唇が千田の唇と重なった。
千田「・・・・・(恵ちゃん)」
体から全ての力が抜けていく。
これが千田の、そして恵のファーストキスだった。