きよく!ただしく!!

呪詛悪魔編 第十話「隣人の甘い罠、そして・・・」

どれくらいの時間がたったのだろう。
玄関で何かが落ちる音がした。

千田「!!」

見るとそこにはきよが立っていた。
呆然と千田達を見ている。

千田「・・・(きよちゃん)」

呼びかけたいが、恵が離れようとしない。
どうしようともがいている千田の目に、それははっきりと見えた。
きよの頬に、一筋の涙がこぼれているのが・・・

主を守るために、主の役に立つためにやってきた守護天使・きよ。
いつも笑顔で明るく元気だった少女が見せる初めての顔だった。

千田「・・・(きよ・・ちゃん!!)」

必死になって恵から離れようとする千田。
とその時、ドアが開いた。
そこには元樹と妃皇子が立っている。

元樹「きよちゃん・・・さ、行こう。」
妃皇子「あなたはもう・・・主には必要とされてないのよ。」

氷のように冷たい笑顔を浮かべ、二人は言った。
きよは振り返り、元樹に近づく。

千田「!!」

元樹と手をつなぎ、外に出たきよ。
そして、ドアが音を立ててしまった。

千田「!!!!!!!!」

次の瞬間、渾身の力をこめやっと恵を引き離した。
その拍子に恵は倒れこむ。
千田は恵をその場に残し、はだしで外に飛び出した。
千田が出て行った瞬間、恵は我に返った。

恵「・・・あれ?ここって・・・千田君の部屋・・なんで・・」

状況が把握できず、キョロキョロするばかりの恵。

千田は夕闇迫る道を走っている。
走りながら頭に浮かんでくるのは全部きよの顔だった。

初めて出逢ったときの嬉しそうな顔、

縁日でラムネを飲む楽しそうな顔、

運動会のとき一等賞をとった時の満面の笑顔、

誕生日の日に公園で見せた涙を浮かべた顔、

舌を出しおどけて見せたお茶目な顔、

そして・・・・さっきの顔・・・

千田「きよちゃぁ〜〜ん!!」

どこに行ったかはわからない。
でも、千田は走った。がむしゃらに・・・・

千田「きよちゃん、きよちゃん・・・きよちゃっ!!!」

つまづいて倒れこむ千田。足からは血がにじんでいる。

千田「・・・きよちゃん・・・・・」

通りの向こうを凝視する千田。

あたりは闇に包まれ、きよの姿を覆い隠しているようだった。


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