どれくらいの時間がたったのだろう。
玄関で何かが落ちる音がした。
千田「!!」
見るとそこにはきよが立っていた。
呆然と千田達を見ている。
千田「・・・(きよちゃん)」
呼びかけたいが、恵が離れようとしない。
どうしようともがいている千田の目に、それははっきりと見えた。
きよの頬に、一筋の涙がこぼれているのが・・・
主を守るために、主の役に立つためにやってきた守護天使・きよ。
いつも笑顔で明るく元気だった少女が見せる初めての顔だった。
千田「・・・(きよ・・ちゃん!!)」
必死になって恵から離れようとする千田。
とその時、ドアが開いた。
そこには元樹と妃皇子が立っている。
元樹「きよちゃん・・・さ、行こう。」
妃皇子「あなたはもう・・・主には必要とされてないのよ。」
氷のように冷たい笑顔を浮かべ、二人は言った。
きよは振り返り、元樹に近づく。
千田「!!」
元樹と手をつなぎ、外に出たきよ。
そして、ドアが音を立ててしまった。
千田「!!!!!!!!」
次の瞬間、渾身の力をこめやっと恵を引き離した。
その拍子に恵は倒れこむ。
千田は恵をその場に残し、はだしで外に飛び出した。
千田が出て行った瞬間、恵は我に返った。
恵「・・・あれ?ここって・・・千田君の部屋・・なんで・・」
状況が把握できず、キョロキョロするばかりの恵。
千田は夕闇迫る道を走っている。
走りながら頭に浮かんでくるのは全部きよの顔だった。
初めて出逢ったときの嬉しそうな顔、
縁日でラムネを飲む楽しそうな顔、
運動会のとき一等賞をとった時の満面の笑顔、
誕生日の日に公園で見せた涙を浮かべた顔、
舌を出しおどけて見せたお茶目な顔、
そして・・・・さっきの顔・・・
千田「きよちゃぁ〜〜ん!!」
どこに行ったかはわからない。
でも、千田は走った。がむしゃらに・・・・
千田「きよちゃん、きよちゃん・・・きよちゃっ!!!」
つまづいて倒れこむ千田。足からは血がにじんでいる。
千田「・・・きよちゃん・・・・・」
通りの向こうを凝視する千田。
あたりは闇に包まれ、きよの姿を覆い隠しているようだった。