ゴーンゴーンゴーン・・・柱時計が6時を打つ。
千田「そろそろパーティーが始まる時間だ。準備はいいかい、きよちゃん?」
一応いっちょうらのスーツを着込む千田。
きよ「うん!うち、パーティーなんて出るの初めてやからめっちゃ楽しみ♪」
フリフリのドレスに身を包んだかわゆいきよ。
部屋を出て向かいの恵の部屋をノックする。
千田「恵ちゃん、そろそろホールに行く時間だよ。」
ガチャッ・・・
千田「あ・・・・・・」
きよ「うわぁ・・・」
ドアが開き、紅いイブニングドレスに身を包んだ恵が現れる。
背中が大きく開き、かなり官能的だ。
恵「お・ま・た・せ♪どう?あたしも意外と・・・でしょ?」
きよ「お姉ちゃんメッチャセクシーやん!!」
千田「・・・・」
あまりの変わりように開いた口がふさがらない千田。
恵「・・・・ちょっと、千田君。どうかしたの?」
千田「ヘッ?!あ・・い、いや・・・きれいだよ、ホント。」
耳まで真っ赤な千田。恵も少し照れてる。
恵「へへへ、ちょっと思い切ってみてよかった・・・」
千田「さ、さぁ、遅れちゃうからいきましょうか。・・・ド、どうぞ。」
ぎこちなく腕を差し出す千田。
恵「フフ、はい。ちゃんとエスコートしてよね。」
腕を組む千田と恵。
きよ「よっしゃ!レッツゴーや!!」
きよは千田と手をつなぐ。
3人並んで1階に降りていくと下のほうで大きな声が聞こえた。
メイ「一体どういうことなのよ〜!!」
メイと美奈が葉月に食って掛かっている。甘奈は後ろでおろおろしている。
葉月「これは先生が決めたことだし、私は・・・」
美奈「あたしたちがモデルなんじゃない!!何であたしたちじゃダメなの?」
千田「どうかしたんですか?」
千田が首を突っ込む。
甘奈「あ、千田さん。実は『FYレース』のドレスのことで・・・」
メイ「聞いてよ千ちゃん!先生ったら『FYレース』のドレスを自分で着ようとしちゃってるのよぉ!」
美奈「あたしたちっていうちゃんとしたモデルがいるっていうのに先生何考えてんのかしら?」
弥生「私がどう考えようと勝手じゃなくて?」
弥生が現れる。
恵「先生・・・・」
弥生「あなたたちにはあなたたちのための衣装を用意したでしょ?何が不満なの?」
メイ「何でアタシのドレスに特別なレースをつけてくれなかったんですか?」
美奈「あたしのも甘奈も普通のデザインのドレスでした。あたしたちが『FYレース』を着られない理由でもあるんですか?」
少し間を置いて弥生が口を開く。
弥生「今夜のパーティーは私の夢であった世界進出の第一歩なの。『FYレース』はそのために作り上げたもの、いわば私の分身。それを最初に身につけるのはこの私と、ずっと決めてたのよ。わかってちょうだい。」
文「弥生が着ることでイベント的にも盛り上がると私も思うわ。」
文も顔を出す。
文「パーティーの最後にデザイナー自身がモデルとして登場。インパクト十分ね。」
弥生「文はわかってくれると思ったわ。」
満足そうな弥生。
文「さ、無意味な討論はこれでおしまい。もうすぐパーティーが始まるわ。各々所定の位置について。」
文の言葉にしぶしぶながら散っていくモデルたち。
弥生「・・葉月、こんなばかげた話はあなたが治めてくれないと困るわ。」
葉月「あ・・・す、すいません。」
弥生「それじゃ、私も準備するから、あとはよろしくね。」
弥生は静かに自分の部屋へと戻っていった。
文「・・・さ、私たちも持ち場へ、ね。」
葉月「は、はい!」
そしてその場には千田、恵、きよだけ残った。
きよ「なんか、すごかったなぁ・・・」
千田「デザイン業界も大変なんだねぇ。」
睦美「でもそこがあたしは大好きよん。」
柱の裏から睦美が現れる。
きよ「入来のお姉ちゃんや。」
睦美「おっ、覚えてくれてたか、少女。」
恵「今のずっと見てたんですか?」
睦美「あたしはああいうギクシャクした場面は撮りたくないのよ。芸術的にきれいじゃないとね。」
さっきはスキャンダルをものにしようとしたくせに・・・
睦美「とう!!」
バキ!!!
ウッ・・・
睦美「小森君、あたしにもこういう技が使えちゃうんだからね。」
す、すいません・・・
睦美「さ、パーティーパーティー♪」
睦美もホールに急ぐ。
恵「あたしたちも・・・いこっか。」
千田「あ・・・・うん。」
やっと3人もパーティー会場に足を運ぶのであった。
さて、パーティーはと言うとのっけから大盛り上がり。
3人の美しいモデルたちは次から次へと衣装を着替えて登場し、MC役の葉月も順調そのもの。
文演出のパーティーのすばらしさに千田は圧倒されっぱなし。
途中きよちゃんも舞台へ上がり『フカワ』の子供服のモデルをした。
その時睦美以外のほかのマスコミからもフラッシュの嵐だった。
恵はと言うと・・・
恵「わ・・わ・・わた・・・私・・・」
どうやら最後に弥生に向かって一言あいさつをすることとなり、今から緊張しているようだ。
葉月「さて、ここでしばらくご歓談の時間を設けたいと思います。皆様、しばしの間おくつろぎくださいませ。」
葉月の言葉で出席者たちは各々の席に戻り、楽しくおしゃべりしたり、食事をとったりした。
きよ「あぁ〜楽しかった。うちもとうとうモデルデビューしてもうたしぃ♪」
千田「よかったね、きよちゃん。・・・恵ちゃん大丈夫。」
恵「う、うん、た、多分・・・」
と、飲み物に手を伸ばしたら・・・・
ガッシャ〜ン!!
千田「うわぁっと!!!」
思わずグラスを倒してしまい、千田のズボンがびしょびしょに・・
恵「ワワワ・・ゴ、ごめん、千田君。」
きよ「大丈夫、お兄ちゃん?」
千田「あぁ・・・大丈夫だよ、ちょっと着替えてくるね。」
そそくさのホールから出て行く千田。