きよく!ただしく!!

元六・ヱ戸時代編 最終話「運命の先」

きよ「・・・おせっかい。」
千兵衛「ん?」

屋根裏できよと千兵衛は恵の背中を見送っていました。

きよ「何が『今立ち上がると・・・着物がはだけるぞ』や。
   ホンマはちょびっと見たかったんちゃうの?」
千兵衛「な、なななな!!!」

黒装束の下の顔が真っ赤となった千兵衛。

きよ「冗談や。ま、これであの子らのことは
   恵お姉ちゃんに任せとけばええやろ。
   うちらはうちらの仕事や。よしき・・・・」
よしき『ハイハイ、待ってましたですね。
    今いるところから午の方角へ十歩、
    卯の方角へ十歩行った所が金が置いてある部屋なんですね。』
きよ「了解や。ほな行くで、お兄ちゃん。」
千兵衛「はいはい。」

抜き足差し足で屋根裏を通り、目的の場所へ到着した二人は
静かに天井板をはずしました。

きよ「はっ!?」

きよは息を飲みました。
その部屋で寿曽屋主人金蔵がお金を数えていたのであります。

金蔵「ひぃふぅみぃ・・・・・くっくっくっ、この輝き、何度見ても飽きないねぇ。」

小判を手に不敵な笑みを浮かべる金蔵の顔は
小判のせいでほんのり山吹色をおびていました。

きよ「ケッ、守銭奴のこんな姿見たないわ。お兄ちゃん、頼むで。」

千兵衛「了解っと。」

千兵衛は天井板をはずした所からすばやく飛び降り金蔵の背後に立ちました。

金蔵「ん?何だ?」

背後に気配を感じ、振り向こうとした次の瞬間、
チャキーン!!プスッ!

金蔵「グッ!!」

千兵衛のかんざしが金蔵の首筋に刺さり、金蔵はその場に倒れこみました。
それを確認し、きよも天井裏から飛び降りたのであります。

きよ「いつものことながら、お兄ちゃんの仕事は素晴らしいなぁ。」
千兵衛「お頭に誉めていただき、光栄です。
     さぁ、さっさとこれ運んじゃおう。」

千兵衛が千両箱に手をかけたその時、

お妃皇「お前さん、どうかしたのかい?」

お妃皇がこっちにやってくる気配がしたのであります。
まさに万事休すか?

金蔵『お妃皇かい?何でもないよ。
   私も用がすんだら寝るから、お前は先に休んでいいよ。』
お妃皇「そう、それじゃそうさせてもらうわね。」

お妃皇の気配が去っていきました。

千兵衛「・・・・やれやれ。そっちの仕事の方が一段と素晴らしいと思うけどねぇ。」
金蔵『お褒めいただいて嬉しいねぇ。あっと・・・ゴホン!!』
きよ「テヘッ、でもやっぱりうちはこの声のほうがあってるわ。」

咳払いを一度するといつものきよの声に戻りました。

これぞきよの、いえ、代々「闇夜の九官鳥」の頭となるものが
生まれながらにして持つ力であります。
老若男女どんな声でも自由自在。
逃げる際にも仕事中にもこの力が大いに役に立つのであります。
漆黒の夜を飛び回る七色の声を持つ盗賊集団、
これが「闇夜の九官鳥」の真の意味なのであります。

きよ「ほな、早いとこおいとませなあかんな。」

きよがそういった次の瞬間。
ピーッ!!
通りのほうでけたたましい笛の音が聞こえました。

千兵衛「恵ちゃん、あの子達を無事に助け出せたんだね。」

ホッとした表情を浮かべる千兵衛・・・・
まぁ、黒い覆面で隠れているからよくわかんないですけど
多分そんな顔をしてたんでしょう。

 

 

時を同じくしてこの人たちは・・・

並森「う・・・ん、ふわぁ〜〜〜〜ってあれ?!ここは・・・」

目を覚ました並森は呆然としました。
道のど真ん中に大の字になって寝ている大森と徳森。

並森「大森さん!徳森さん!!起きてくださいよぉ!」
大森「ゥゥ・・・どうしたんや波森、騒がしい・・・って、お?」
徳森「・・・・・」

目を覚ました二人も何が起こったかわからずボォ〜ッとしています。

大森「確か赤提灯に誘われて一杯ひっかけて
   そこの親父に『闇夜の九官鳥』のことを聞いていて
   フラァ〜〜ッとしてきて・・・・その後何があったっけ?」
並森「オレもそれが思い出せないんですよぉ。どうしちゃったんでしょうねぇ。」
大森「ウ〜ン・・・・まぁ、世の中には不思議なことがあるってことだな。
   そんなとこでいいでしょうか、徳森さん?」
徳森「・・・まぁ・・・なぁ・・・」
並森「そんじゃそろそろ帰りましょうか?」
大森「そうだな、どうやら『闇夜の九官鳥』も今夜は動かないみたいだし。
    帰って風呂はいって寝よ。」

三人はゆっくり家路に向かったのでありました。

よしき「あんな人たちが僕たちの平和を守ってると思うと、なんだか拍子抜けしちゃうんですねぇ。」

彼等の背中を眺めながら、よしきはため息をついたのでありました。

よしき「ま、僕らの仕事がやりやすいんでいいんですけどね。
    それじゃ僕は最後の大仕事の準備なんですね。」


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