「………さま」
誰かが私の外で言っていた。
「……じんさま」
その声は、だんだん大きくなっていく。
「……主人様」
この声は…。
「ご主人様!!」
そう、この声は…。
「…ラナ」
意識が朦朧としている中、私は全ての神経を目を開けることに集中させた。
そして瞼が開くと、そこには目が赤く腫れ上がっていたラナが私の手を両手で包み込むように握っていた。
「ご、ご主人様!!」
「……あんた、泣きすぎだよ。こんなに、目を赤くしてさ」
自然と出た言葉。
酸素マスクをしていたから、ラナに聞こえていたかはわからないけど。
「わ、私、先生に報告してきます!」
ラナは慌てて部屋を出て行った。
ったく、慌しいんだから。
にしても、ここは一体、どこだろう?
確か、お兄ちゃんの動物病院を出て、それから、子猫を見つけて…。
そうだ、それからトラックにはねられたんだ。
よく生きていたな、私。
普通なら即死ものなんだけど、よく五体満足で…。
「? あれ?」
不思議な感覚にとらわれた。
うまくいえないんだけど、なんか、感覚が1つなくなっている気がした。
なんだろう、これ?
視線を体の方へと向けてみると、そこにはあるべきものがなかった。
「布団が、左足の方だけ、沈んでいる…」
そこでやっと理解した。
私の左足が、失われていることに。