全てがどうでも良くなっていた。
大切な子たちの死は、私の人生を大きく変えた。
助けてあげれなかった。
モモちゃんも、ラナも。
動物のためにどうしてそんな心を痛めるんだって、親から言われたとき、私はこう言った。
「…あんたたちよりも、ずっと、家族だって思えたからよ」
初めて、親に表立って反抗した瞬間。
お兄ちゃんを憎み、親を憎み、関係ない人たちを、人間を憎んだ。
幼い心を守るためには、そうするしかないから。
誰かを中傷して、悲しみに満ちた心を保護するしかなかった。
傷つくことは、もうなかった。
逆に、私が傷つけていった。
親に手はあげたことが一度もなかったけど、他人や、犬や猫には凶器を向けた事がある。
喪失感を、他人にも味あわせたかった。
そんなことを続けていた高校2年生のある日、私はペットショップで楽しそうに動物を見ている女の子がいた。
それが、守護天使になる前のラナだった。
「…何しているの?」
無感情で、私は話しかけた。
「動物を、見ているんですよ」
「…そんなの、わかっているわよ」
少し苛立つ私をよそに、ラナは私を振りかえることなく話し続ける。
「ここにいる動物さんたちは、みんな、優しいご主人様のところに行くんですよね」
やけに大人びた子供だと思った。
見た目は小学1年生なのに、中身は私よりも大人が入っているのかと錯覚させられるぐらい。
「優しくなんか、ないと思うよ」
いつもならシカトしていたけど、女の子が発していた雰囲気がどこか懐かしいものだったから、真剣に答えた。
「動物は、人間とって奴隷でしかないから。自分たちの道楽のために飼って、いらなくなったら捨てる、そんなご時世だから」
「…私は、難しい事は、よくわかりません」
「だろうね」
「でも、私はとっても大切にされたことがありますよ」
一瞬、この子が言っている事がわからなかった。
「9年前、白鳥だったときに、大切にされたことがあります」
「はあ? あんた、人間でしょ?」
それが普通の人間の反応だと思う
この世の中には、守護天使の概念はまだまだ存在しない。
だから、そういうことを言うと、馬鹿にされるか、もしくは、混乱させる。
私も、最初はそうだった。
「…ご主人様は私に、あんたは私が守ってあげる。もう、絶対にモモちゃんのときみたいなことは、させないからって言ってくれました」
「それって…」
ラナが白鳥だったときに、確かに私はそう言ったことを思い出した。
どうして、まだ子供のあなたがって思ったとき、頭の中に、あのときのことが流れこんできた。
そして、この子があのときの白鳥のラナだということを悟った。