2人のモモ

第7話「再会・お兄ちゃん 後編」

 ゆさゆさ。

「う、う〜ん」

 誰かに体を揺すられて、私は目を覚ました。
 そこには、私服姿のお兄ちゃんとラナが立っていた。

「あっ、やっと起きた、ご主人…じゃなくて、桃華お姉ちゃん」
「…ああ、うん。ちょっと、眠っていなくてさ」

 一瞬戸惑ったけど、他の人が側にいるときは、私のことをお姉ちゃんと呼ぶように言ったことを思い出した。

「そういえば、あの子犬は?」
「大丈夫。きみのおかげで、なんとか一命を救うことが出来たよ」

 あのころと変わらない笑顔で、お兄ちゃんは言う。
 気づいては、いないか。
 まあ、そうだよね。
 あれから10年は経っているから、変わらなくてもしょうがないか。
 でも、見た目はモモちゃんと一緒なんだから、わかってもいいんだけどな。

『ねえ、ご主人様』」

 頭の中に、ラナの声が響く。
 ラナの特殊能力の1つ、テレパシーだ。

『もしかして、この人がご主人様の探していた…』
『うん。お兄ちゃんだよ。もっとも、あっちは気づいていないだろうけどね』
『言わないんですか?』
『確実に信じてもらうのが手元にないから、どうしようもないよ』

 写真でもあればいいんだけど、荷物はホテルの方に置いているから、証明のしようがない。
 それに、私の名前を覚えていなきゃ意味がないから。

『…私を経由して、ご主人様の思いを伝えればいいですよ』
『そんなこと、できるの?』
『はい。ただ、そんなに長い時間はできませんけど…』
『それで充分だよ』

 今ここで伝えなきゃ、もうチャンスはないと思うから。
 私はもう、自分できっかけを無くす事はしたくない。

『じゃあ、私の手にご主人様の手を置いてください。そうしたら、私がこの人に毒…じゃなくて、テレパシーを飛ばしますから』
『うん。お願いね』

 なんか言いなおしたのが気になったけど、ラナのことだから特に心配はしない。
 それよりも、集中しなきゃ。
 私は自分の手をラナの手に乗せた。

『昔のことを、思い出してくださいね」
『うん。いつでもいいよ』
『では、行きます!』

 ラナが目を閉じたのを合図に、私は昔のことを思い出す。


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