「ここだよ」
数分後。
女の子の誘導で、私は動物病院の前についた。
『もみじ山動物病院』
そこは、モモちゃんに聞いた、お兄ちゃんが働いていた病院だった。
結構近かったんだ。
「アタシ、ここのお医者さんの知り合いだから、顔パスで通れるよ」
「じゃあ、早く行こう」
私たちは病院の中へと入り、子犬の様態を説明すると、すぐに診療室に通してくれた。
「ご主人…じゃなくて、キャプテン!」
「ツバサ!? どうしたんだ、一体」
そこには、女の子の知り合い風の男性が立っていた。
少し変わっていたけど、お兄ちゃんだった。
私の記憶の、お兄ちゃんだった。
「この人が、衰弱した子犬を見つけたんだけど、病院の場所がわからなかったから、アタシが案内してあげたの」
「正確には、私じゃなくて、連れの子だったんですけどね」
私は抱きかかえていた子犬を、静かに診療台に乗せた。
再会を喜びたいけど、今はそれどころじゃない。
1つの命の灯火を繋げるために、私はぐっと我慢する。
「助けて、くださいますか?」
「もちろんです。早速、手術に移ります」
「じゃあ、あとはよろしくお願いします」
私はお兄ちゃんに一礼すると、ツバサと呼ばれた女の子と一緒に出た。
ここから先は、ただ祈るしかない。
「キャプテンは、きっとあの子犬を助けてくれますよ」
「…獣医さんだからね」
私は近くにあったベンチに座って、子犬の手術が終わるのを待つことにした。
なんか眠りが浅いこともあって、すぐに夢の中へと落ちていった。
<続>