D.F本部の閉め切られた1つのドア、その奥にまだあの2人はいた。
ゴトッ パサッ
ギィスが箱から取り出した新しいグラブを机に置く。
それをケンがボロボロのグラブと着け返る。
ギィス「なあ・・・悪い事は言わん、もうガズーには関わるな・・・と言っても無駄だろうな」
ギィスがケンに忠告をかける。
ケン「わりぃな」
ギィス「お前はD.Fに入隊してた頃もそうだったよな、自分が正しいと思ったら絶対に引き下がらない」
ギィスは酒を飲み干し、再び口を開く。
ギィス「例えこの私が止めようとしてもな・・・・」
苦笑いを浮かべるケン。
ギィス「クロウザーはな・・・・」
ギィスの突然の言葉に顔を上げるケン。
ギィス「共に生死を賭けた唯一の戦友だったんだ・・・せっかくヤツの仇を討てたと思っていたのに・・・アイツは!」
ギィスが再びグラスにバーボンを注ぐ。
ケン「バカ、もうやめろ!」
ギィス「こいつはクロウザーの分だ!」
サッ
ケンがグラスを奪い取る。
ケン「クロウザーの分ならオレ様がもらっとく」
そう言ってケンは酒を飲み干した。
ギィス「ケン・・・・」
「ルシーダ」に戻ったケンは、1本ずつストックのナイフを磨いていた。
ケン「・・・・・」
向きを変える度にナイフの刃がキラリと輝く。
そしてケンがナイフをしまおうと下げた時、目の前にはサファリの姿があった。
サファリ「そんなの持ち出して何しようってんだ?」
サファリがケンに尋ねる。
ケン「・・・・お前には関係ねーよ、バーカ」
サファリ「・・・・チッ」
ケンの答えに舌打ちをするサファリ。
カチャリ
ケンとサファリの横でドアの開く音がした。
ドアから出てきたのはユージだった。
そして後ろには彼が呼んだのであろう、住人全員がいる。
ユージ「ケンさん・・・すみませんが、あなたの事を少し調べさせてもらいました」
ケン「ほお・・・で、何がわかったんだ?」
ユージの言葉にケンが返事を返す。
ユージ「前から気になっていました・・・ケンさん、あなたは普通の守護天使より明らかに戦闘能力が高い、
階級こそ2級守護天使ですが、戦闘能力のみを見れば・・・おそらくは8級神に相当する」
住人達「!?」
ユージ「ケンさん・・・あなたは・・・まさか」
ケン「・・・・・ああ、オレ様は・・・元呪詛悪魔だ」
住人達「!!」
ユージとケンの言葉に誰もが言葉を失う。
そら「・・・・どうして守護天使になったの?」
そらが恐る恐る尋ねる。
ケン「光を思い出したってトコだな」
ケンは静かに口を開いた。
再び沈黙が場を支配する・・・・
ピピピピピッ
突然パソコンから呼び出し音が鳴り響いた。
ピッ
ティコが画面を呼び出す。
ティコ「よしきさん!」
その画面には、何者かに打ちのめされたのか、ボロボロになったよしきの姿があった。
よしき「ア、アハハ・・・つかまってしまったん・・・ですね」
よしきが情けなさそうに口を開く。
よしき「ケンさん・・・あの場所に1人で来い、さもないと僕の命は無い・・・だそうですね」
ケン「・・・・・」
ガタッ
ケンは何も言わずに席を立つ。
よしき「いいんですか?これは罠なんですね」
ケン「・・・わかってるさ」
ガチャッ
ドアを開けるケン。
サファリ「ケン!」
突然声を上げるサファリ。
ケン「・・・・・」
サファリ「俺は知らねぇからな!」
ケン「・・・・了解」
バタン・・・
サファリ「・・・・チッ!」
サファリは再び舌打ちをした。