未だ見ぬ此方の物語

――翌日――

「なんで…メガミ様が遅刻するんですか?」
「ぃやー、ごめんなさい。昨日保美君…あたし☆のご主人様の所で徹夜漬けでゲームと原稿手伝ってたら…寝たのが4時なんだもの。おかげで寝不足よ〜。ぁふぁ…」

せかいは思った。『この人は自由なメガミ様なんだなぁ』と…。

「そういえば、サッちゃんも来る筈なんだけど〜…。まだ来てないのかな?」
「いえ、さっき来ていたんですけど…」
「そう、ま、いいわ。まさか旦那様と一緒になって徹ゲーやってたなんて知られたら…」
「あ…」
「それこそサッちゃんに『ぽこぽこぽこ〜♪』ってされちゃうものね」
「…」
「あー見えてサッちゃんはしっかりとしてるから、もし昇格試験にメガミ様が遅れた〜って事知られたら…」
「…」
「と、いう事で遅刻した事は内緒ね♪」
「…」
「?どうしたのよ?ボーっとして」
「…いえ、あの…」
「まさかあたし☆の真後ろにサッちゃんがいたりして?」
「そ、そうです…」
「別に後ろにいたっていいじゃないの。まさかバレてるわけじゃなし」
「ばれてます…」
「だからバレてる…って、へ?」
 
メガミ様は体を180度回転させた。
その後ろにはサキが見つめていた…
 
「…どの辺から聞いたの?」
 
サキは重々しい口調で
 
「『旦那様と一緒になって徹ゲーやってたなんて知られたら…』から…」
 
メガミ様は汗をかき始めた。笑顔のまま質問する…
 
「…怒ってる?」
 
サキは静かに…
 
「怒ってるわ…」
 
メガミ様は満面の笑顔でこう言った…
 
「許してね?」
 
途端、サキの手がバスターソードに触れた。メガミ様は泣きながら
 
「分かったわよ!後で始末書書きますよ!それでいいでしょー!?」

サキは、静かにバスターソードから手が離れた…。
隣ではせかいが固まってる…

かくして、せかいの第3階級昇級試験が始まった…





「それじゃ、昇格試験を始めます。今回の昇級試験は…」
「…」
 
せかいの表情が強張る…

「お昼ご飯を作ってもらいます」
「…………――――――――」

せかいの腰の骨が砕けた…
 
「そ、それだけなんですか?」
「そうよ?お昼ご飯を作るの。その為に態々食堂選んだんだから」
「そ、そうなんですか…」
「所で、どうして私が必要なの?」
「何言ってるの。サッちゃんはお客さんよ。昨日のお礼よ」
「……あなたが言うべき言葉じゃないわ…」
「だって。悪いんだけど、せかいから言ってくれない?」
 
なんとまぁ、都合のよいメガミであろうか…
 
「え?え…えーと、じゃぁ、お礼として、食べていってください」
 
サキはふぅと一息ついて
 
「そうさせてもらうわ…でなければ、ここに来た意味がないもの…」
「下拵えがあるので、しばらくくかかると思います…」
「構わないわ…」

「あなた、何を考えているの?」
「何をって?」
「普通に料理をする事が昇級試験なの?」
「なわけ無いでしょ?」
「でも、どう見ても普通に料理する試験にしか見えないわ」
「そりゃそうよ。あの子にとってはそれが試験なんだから」
「? 言っている意味が分からないわ…」
 
サキはメガミ様の矛盾な言動に呆れている。無能とさえ思うだろう…

「サッちゃん」
「…何?」
「サッちゃんは、料理できる?」
「…当たり前よ」
「それじゃ、包丁を使って料理できる?」
「…包丁がなければ料理に困るだけよ…」
「…あの子の前世の死因。分かる?」
「確か、人間に殺されたのよね?………………!?」
 
サキは何かに気付いたようだ…
 
「まさかあの子が…人間の刃物による刺殺…」
「そういう事♪」


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