――1時間後――
「出来ました!」
エプロン姿のせかいが厨房から料理を持ってきた。
「ほぅ、どれどれ…」
メガミ様は自分の昼食になろう定食を覗き込んだ。
「鯖の味噌煮。金平牛蒡。出し巻卵。肉じゃがに冷奴。あとはお味噌汁とご飯ね」
「はい、洋食にするか和食にするか迷いましたけど…。和食の方がいいかなって…」
「………………」
サキは黙ったまま料理を見ている。
「あ、あの…」
「…飾り付けは悪くないわ」
サキは一言そう言った…
「あ、ありがとうございます!」
「あ、それあたし☆の台詞よー!」
「……涎(よだれ)拭きなさい…」
サキはもう諦めた表情になっている。
「もう、お腹ペコペコ。頂きまーす!」
「それじゃ、頂くわ…」
…
……
………
「鯖の味噌煮、まだあるの?」
「え、ええ。まだ、あります」
せかいは鯖の味噌煮が入った食管を持って来た。
「それでは2匹目…」
ガッ!
メガミ様の箸をサキが咄嗟に押さえつける。
「鯖は…………渡さないわ…」
「あーら、あたし☆が先に手を出したんだけど?」
「…私よ…」
サキの眼光に並々ならぬ意志を感じ取ったメガミ様は
「くっ!仕方ないわ。せかい!肉じゃがときんぴら持ってきて!」
「は、はい!」
せかいは前世でご主人様が言った事を思い出した。
「給食はまさに戦争だよ…」
…
……
………
全部食管が空になった。元々少し多めに作っておいたのが幸いだったようだ。
「あー美味しかった。ごちそうさま」
「…ええ…」
「お、お粗末さまです…」
せかいは「食べ物を争う世界」を初めて知った。元々彼女の種族…チスイコウモリは
食にありつけなかった仲間に自分の食べた分を分け与えていた。その様子とは全然違う。
彼女は「戦争」を見たのだ。