「さて、試験結果を発表します」
「え?発表って…」
「お昼ご飯の結果よ。今までの料理から上達したかどうか…」
「…………」
せかいは不安そうに慌てふためいている…
(以下、メガミ様、せかい、サキと続きます。)
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………ねえ?」
メガミ様に話し掛けるサキ。
「いつまで黙ってるの?」
「最近テレビで覚えたのよ。こうやって引き伸ばして答えを言うヤツ…」
「み…」
サキはそこで口を止めた…。
「あの…それで…結果は…」
「合格!!!」
「わあっ!」
「!!」
いきなり合格を叫んだメガミ様に二人は驚いた。
「お、おどかさないでください!」
「あは、ごめんなさい。でも合格よ」
「本当に…、本当に合格なんですか!?」
「ええ。もうバッチシ!」
「よ、よかったぁ〜…」
せかいはそのままへたりと座り込む。
「ま、採点基準は『包丁』を使って料理するかどうか、よ。せかいは今まで刃物を使う事すら怖がって全然使わなかったでしょ?今回は包丁をちゃんと使っていたわね」
「そういう事だったんですか…」
「それより包丁怖くなかったの?」
「包丁が使えないと、ご主人様にご馳走なんて出来ません」
せかいはそう言うと赤くなって俯いた。
「まぁ…」
メガミ様は手を頬に当ててせかいを煽る。
「で、サッちゃん。ご感想は?」
「…よく出来ていたと思うわ…。鯖の味噌煮の味が少し薄かったけど……隠し味、使ったわね?」
「あ、はい…」
「…上出来よ」
「と、いう事で2階級ね♪」
「え!?3階級じゃないんですか?」
「何をいうか。サッちゃんに誉められるなんて、もうこれから256%永遠にないのよ? それくらいに値するのよ。ね、サッちゃん?」
「………」
サキはメガミ様の言動に不満があるようだ…。
「なぁによ?本当の事言ったまででしょ?」
「…別にいいわ…」
――こうして、せかいの長い昇格試験はひとまず終わりを告げる――
「はい、これ」
「?これはなんですか?」
「これは『ロッド』。長い棒にも、三節棍にもなる便利な武器よ。これで少しは護身術になるでしょ?餞別よ」
「これで単独行動はOKね。次はせかいのご主人様に憑かせないと♪」
「…なんだか、あまりいい意味じゃないですね…」
せかいは不安そうだ。
「なぁに言ってるの。こんな美少女に憑かれるならご主人様は本望でしょ」
「そ、そうなんですか…?」
「もっと自分の魅力に自信持ちなさい。こう、めいど服で押し倒すくらいの勢いで…」
メガミ様はそこでストップした。
サキが武器を構えている…
「ま、とにかく今日明日にでも憑かせてくるから、そうすれば面倒見放題よ。気合入れなさい!」
「はいっ!」
…
……
………
「あ、そうそう。サッちゃんに良い事教えてあげる」
「何?いきなり…」
「いい?これから言う事を、よ〜く聞いてね」
「?」
○人生において重大なのは生きることであって、生きた結果ではない。(ゲーテ)
○自己に絶望し、人生に絶望したからといって、人生を全面的に否定するのは
あまりにも個人的ではないか。人生は無限に深い。われわれの知らない
どれほど多くの真理が、美が、或いは人間が、隠れているかわからない。
それを放棄してはならぬ。(亀井勝一郎)
○過去にしがみついて前進するのは、鉄球のついた鎖を引きずって
歩くようなものだ。囚人とは罪を犯した者ではなくて、自分の罪にこだわり、
それを何度も繰り返して生きている人間のことだ。 (ヘンリー・ミラー)
「これらをよく刻み込んでおきなさい」
「…………」
「どんなものであれ『誰かがやらなければならない』ものよ…」
「…………」
メガミ様はサキの方を振り返り、
「…あたし☆はサッちゃんの事、好きだからね…」
そう言い残し、サキの元を去って行った………