未だ見ぬ此方の物語

「はぐぁっ!!」
 
その頃、せかいは「人型の物体」と交戦中であった…。
状況はせかいが圧倒的に劣勢である。何しろ攻撃手段がないのだ。
先程の攻撃も紙一重で避けていた…。
 
「…こ、こわい…」
 
せかいは今にも泣き出しそうであった。
 
「物体」はそんな事を他所にロザリオを振り回してくる。直撃ならばいくら守護天使とはいえ、無事ではないだろう。
「そ、そうだ!」
 
せかいは閃いた様に隠れていた翼を広げ、空に浮いた…
特殊能力《飛行》である
 
「こ、これなら…」
 
物体は元から浮いているので、追って来れないという訳でもない。
だが《飛行》ならば制空権は彼女の庭も同然である。
しかし「物体」はそれを追おうともせず、ロザリオを振り回しているだけである。
 
「!? 不味い!! 逃げて!!」
 
怪我を負った少女は大声で叫ぶ。
 
「えっ!?」

しかし遅かった。
急激に辺り一面の気温が下がり、せかいと少女の周りを小さな氷の粒が覆う…
 
「う、動かな…!」
 
刹那!

カシャーン!

氷の砕ける音と共に二人の体温は急激に奪われていた…
せかいはそのまま墜落していく…
 
「ううっ!」
 
地面に叩きつけられる直前に《飛行》を使い、何と体勢を立て直すが、体は震え、既に戦える
状況ではない。「物体」は止めを刺すかの様に、ロザリオを振りかざし、二人を目掛けて振り下ろす…
 
(…ご主人様! た…たすけ…て…)

 
――――

「…!」

彼は誰かに呼ばれた気がした……

懐かしく…とても親しかった「誰か」に……

きっと知っている人だろう…だが、今は声にならなかった……

か細い声で、助けを求められたような胸騒ぎ…

彼は「誰か」が無事である事を祈った………

――――

 
ボォゥンッ!

巨大な太鼓を殴った様な響きと共に、「物体」は反動により、吹き飛ばされていた。
 
「え……ぇ…え?」
 
せかいは何が起こっているのかが分からなかった。
だが無事である。それは事実だった…
 
「な、なに…!? あなた、何をしたの?」
 
少女も驚いているだけである。
 
「いえ、私は何も…?」
 
どうやら何かに護られていた様子である。
暫くして「物体」も体制を立て直し、再び襲い掛かってくる!
 
「あっ! 来た…!」
「くっ! 再戦か…!?」

だが再戦はなかった…

「くぉら! 妖怪・白骨魔神戦騎! よくもあたし☆の可愛い妹分を!!」
 
その掛け声と共に、空から3つの影がいきなり現れるなり、その一人が「物体」に向かって落下したまま、踵落としを入れている!「白骨魔神戦騎」はそのまま地面にめり込む…!

「め………メガミ様!」
「お待たせ。あ、サッちゃん、後は任せたから!」
「……あなたも手伝って欲しいんだけど?」
「大丈夫大丈夫! サッちゃんなら一人だって倒しちゃうって」
「…呑気なものね…。まあ…いいわ…」
 
サキはバスタードソードを抜くと「白骨魔神戦騎」に向かっていった…


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