――とある小さな丘群――
巫女の姿をした、端整な物腰の女性……
彼女はメガミ様…
メガミ様は小さな丘に降り立ち、石柱に呼びかける…
「せかい。もう転生しても大丈夫よ。魂の受け皿に降り立てる時が来たわ」
そう言うと、今まで淡く光っていた銀の宝玉が強く煌き、新しい守護天使が誕生する…
「チスイコウモリのせかい。守護天使の名の元に、只今転生しました」
彼女の名はせかい。前世はチスイコウモリである。
「よく今まで頑張頑張ったわね。周りの不評を浴びながらも僅か12歳で4階級に達したその努力、立派なものね…」
誉めてはいるのだが、メガミ様は呆れた様子である。
「ありがとうございます」
彼女は人間に殺された事から「呪詛の資質があるのでは?」という疑いをかけられているが、その疑いの眼差しに負けず、今日まで努力してきたのだ…。
自分を命懸けで助けてくれた主と一緒に暮らすという約束を果たす為…
ただ、それだけの為に…
「でもまだ4階級じゃ中級守護天使の為、単独での行動は許されません。あたし☆個人の評価なら、すでに大丈夫だと思うけど、全体の意見を採る場合はそうも行かないの。 メード(めいど)バトラー(しつじ)そしてせかいの知らない場所で動いている奴等を 納得させる為にも、次は3階級への昇級試験を受けてもらうけど、どうする?」
「は……はい!お願いします!」
「それじゃ昇級試験は後日連絡するから。今日は疲れたでしょう。
スレーヌ寮の2号館に部屋があるからゆっくりと休みなさい」
「あ…はい」
メガミ様はそう言い残し、別の丘へ移ろうとする…………と、振り返り
「せかい」
「あ、はい、何でしょう?メガミ様」
「せかいは守護天使の行動理念における鏡ね」
「え?…………あ、ありがとうございます…」
「でも忘れないで…」
「?」
「『この身に代えても守る』という行動は、時として、跡に大きな悲しみを残すわ。 その悲しみがやがて『絶望』という最悪の結果さえ招く事があるの…。あなたを始め、 守護天使は吉報を告げる天使よ。それを忘れないで命を大事になさい…。あたし☆は主に仕える事が全てじゃないって思いたいの………」
「…………………………………………はい……………………」
その言葉に、確かな重みと責任を感じたせかいだった…
前世での事を言っているのだろう…
メガミ様は別の丘へと向かっていく…
「よし!こっちは異常なしね。いつも通り」
メガミ様は、いつものようにもう一つの丘を巡回していた。
「にしても…相変わらず変よねぇ…ここの守護天使の宝玉は」
メガミ様は石柱を見上げる…。
その先には「宝玉」がない…いや、見えていないのである。
光がそのまんま見えているのだ
「初めて見たわね、こんな色。あ、元から色ないんじゃないの、これ?」
つまりは透明である。
「でも今の所は順調なようね。他のと違って妙だったけど安心したわ」
「………………………………………………………」
メガミ様は急にむすっとした顔になる。
「何、さっきのは…?…………イヤ〜な感じ」
メガミ様は辺りを見回した…
周りにはきれいな草原の丘である。悪寒を感じさせような物は何一つない。
だがメガミ様は、確実に「何か」が通過した後を感じた…。
「ま、いいや。白鷺のサッちゃんの所にでも遊びに行きますか。あの公園にいればいいけど…」